スーパーのバックヤードや惣菜コーナーで働いた経験が、調理師免許の受験資格である「実務経験」に該当するのか疑問に感じている方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、スーパーの惣菜・鮮魚部門で調理に従事し、勤務日数や時間の基準を満たしていれば、パート・アルバイトでも実務経験として認められる可能性があります。一方で、品出し・レジ・清掃のみの業務や、精肉部門での切り分け・加工は、原則として対象外です。
パートやアルバイトといった雇用形態や、品出し・パック詰めといった担当業務の違いによって、実務経験として認められるかどうかの判断基準は異なります。
この記事では、調理師法や厚生労働省の通知に基づき、スーパー勤務における実務経験の客観的な条件、部門ごとの対象範囲、勤務時間の考え方、さらに店舗や本部への調理業務従事証明書の依頼手順まで分かりやすく解説します。
- スーパーの部門・業務内容ごとに調理師試験の実務経験として認められる範囲
- パート・アルバイト勤務で実務経験の要件を満たすための労働時間の考え方
- 店舗や本部へ「調理業務従事証明書」の作成を依頼する際の具体的な手順と注意点
1.スーパーの仕事は調理師試験の実務経験に含まれる?

調理師法第3条では、調理師試験を受けるための条件として、「多数人に対して飲食物を調理して供与する施設又は営業」のうち厚生労働省令で定めるものにおいて、2年以上調理の業務に従事することを定めています。
スーパーマーケットの惣菜部門や鮮魚部門は、食品衛生法上の営業許可を受けて調理・加工を行っているため、施設と業務内容の条件を満たしていれば、実務経験として認められる可能性があります。
ただし、同じ店舗内でも、部門ごとに受けている営業許可や担当業務は異なります。そのため、実務経験になるかどうかは店舗単位ではなく、部門と業務内容で判断されます。
部門別の実務経験カウント可否一覧
まずは部門・業務ごとに実務経験としてカウントされるかどうかの目安を一覧にまとめます。詳しい理由は次項以降で解説します。
| 部門・業務 | 実務経験としての扱い | 主な内容・理由 |
|---|---|---|
| 惣菜部門(調理・加熱・仕込み) | ◯ 対象になりうる | 惣菜・弁当の調理、加熱調理、下処理・カットなど(既製品を開封・加温・盛り付けるだけの作業は除く) |
| 鮮魚部門(下処理・加工) | ◯ 対象になりうる | 三枚おろし、刺身・お造りの作成、加熱調理加工など |
| 惣菜・鮮魚部門でのレジ対応・接客 | △ 対象外となる可能性 | 調理行為を伴わない提供・会計の時間は対象外とされる可能性がある |
| 精肉部門(切り分け・スライス・ひき肉加工) | × 原則対象外 | 食肉販売業は対象営業に含まれず、食肉の分割等も調理業務と認められないため |
| 品出し・商品陳列・値付け専任 | × 対象外 | 調理行為を伴わないため |
| レジ打ち・接客専任 | × 対象外 | 調理行為を伴わないため |
| 洗浄・清掃専任 | × 対象外 | 調理行為を伴わないため |
| 青果部門(袋詰め等)・サービスカウンター・一般食品レジ | × 対象外 | 調理行為を伴わない部門・業務のため |
上記の◯・△・×は本記事で解説する一般的な考え方に基づく目安です。最終的な判断は、勤務先が発行する証明書の記載内容や、出願予定の都道府県窓口への確認によります。
対象となる部門と業務内容(惣菜・鮮魚での調理加工)
| 対象部門 | 認められる具体的な業務内容 |
|---|---|
| 惣菜部門 | 弁当や惣菜の調理・加熱(揚げる・炒める・煮る)、食材の下処理・カット、寿司の調理など |
| 鮮魚部門 | 生魚の下処理・三枚おろし・さばき、刺身やお造りの作成、加熱調理加工など |
これらの部門で包丁や加熱器具を使用し、直接的な調理行為に携わっている場合は、実務経験の対象となる可能性があります。
一方、精肉部門には注意が必要です。精肉売り場が一般的に受けている食肉販売業の許可は対象営業に含まれていません。また、試験を実施する調理技術技能センターも、食肉の分割などの作業は調理業務と認めていません。
そのため、精肉の切り分け・スライス・ひき肉加工に従事した期間は、原則として実務経験に数えられません。
精肉部門に所属しながら惣菜の調理も担当しているなど、判断に迷う場合は、受験予定の都道府県の窓口へ確認してください。
参考:
厚生労働省|調理師法施行規則
公益社団法人調理技術技能センター|令和8年度調理師試験
対象外となる業務(品出し・レジ・清掃専任など)
一方で、調理行為を伴わない接客や単純作業、周辺業務のみに従事している場合は、実務経験として認められません。
厚生労働省の通知でも、ウェイター・ウェイトレスのように飲食物を「提供」する行為は調理業務とは区別されており、喫茶店での飲料提供や茶菓の提供も調理とは認めがたいとされています。
この考え方に沿えば、スーパーの惣菜売り場であっても、接客やレジ対応の時間は部門に所属していても調理業務としてはカウントされにくいと考えられます。
- 品出し・商品陳列・値付け専任:出来上がった商品を売り場に運ぶ作業や値札貼りのみを行っている場合
- レジ打ち・接客専任:レジスターでの会計作業や対面販売のみを行っている場合
- 洗浄・清掃専任:調理器具や食器の洗浄、バックヤードの清掃作業のみを担当している場合
- 簡易な調理のみ:調理済みの既製品(そのまま食べられる食品)を開封・加温・盛り付けて提供するだけの作業のみを担当している場合(惣菜部門に所属していても対象外となる可能性があります)。半製品を揚げる・焼くだけの作業が調理業務に当たるかどうかは、受験予定の都道府県の窓口に確認してください
- 対象外部門での勤務:精肉部門(切り分け・スライス・ひき肉加工)、青果部門(単なる袋詰めなど)、サービスカウンター、一般食品レジなど
判断に迷う場合は、証明書を作成してもらう際に、勤務先や自治体窓口へ相談しておくと安心です。
▼一緒に読みたい記事
もし今の勤務内容では実務経験の要件を満たすのが難しそうだと感じた方もいるかもしれません。実は調理師免許には、実務経験を積む以外にも「調理師養成施設を卒業する」という別のルートがあります。学校に通うルートの特徴や費用、期間まで整理しているので、自分に合った取得方法を比較検討したい方はあわせてチェックしてみてください。
2.実務経験として認められるための労働条件と計算方法

業務内容が調理に該当していても、通知で示された勤務時間や継続期間の要件を満たしていなければ受験資格は得られません。
厚生労働省の通知および各都道府県の受験案内では、労働条件に関して基準が設けられています。
必要な勤務時間と期間(週4日以上・1日6時間以上が原則)
厚生労働省の通知(平成4年3月30日付 健医健発第20号)では、パート・アルバイトで調理業務に従事している場合について、次のように示されています。
- 原則的な勤務条件:週4日以上かつ1日6時間以上勤務している場合を除き、調理の業務に従事しているものとは認められないとされています
- 必要な継続期間:調理師法第3条に基づき、通算2年以上の従事期間が必要です
フルタイムの正社員であれば、この条件を満たしたうえで2年間継続して勤務することで要件を満たします。
なお、実際の運用は都道府県ごとに定められており、原則とは異なる勤務時間でも受験を認めている自治体もあります。
たとえば令和8年度試験では、愛知県は「週5日以上かつ1日5時間以上」または「週6日以上かつ1日4時間以上」、福岡県は「週5日以上かつ1日5時間以上」の勤務(実働)でも受験できるとされています。
週あたりの実働時間に換算すると、原則(週4日×1日6時間)は24時間、愛知県の特例は25時間(週5日×1日5時間)または24時間(週6日×1日4時間)、福岡県の特例は25時間(週5日×1日5時間)です。特例は週の合計時間を大きく緩和するものではなく、勤務日数と1日あたりの勤務時間の組み合わせを選べるようにしたものと考えられます。
一方で、週の合計時間が足りていても、原則の条件をすべて満たさなければ認めない自治体もあります。自分の勤務形態が該当するかは、受験予定の都道府県の案内で確認しておきましょう。
参考:
厚生労働省|調理師試験の受験資格に係る調理業務従事の認定について
公益社団法人調理技術技能センター|令和8年度調理師試験
パート・アルバイト勤務におけるカウント基準
雇用形態(正社員、契約社員、パート、アルバイト)による制限はありません。
シフト制で週によって勤務日数や時間が変わる場合は、条件を満たしているかを自分で判断しにくいことがあります。勤務記録を手元に用意したうえで、受験予定の都道府県または試験実施機関に確認しておくと安心です。
なお、令和8年度試験では、東京都を含む30都県の受験申請を公益社団法人調理技術技能センターが受け付けています。受験する都道府県によって確認先が異なるため、受験案内の発行元もあわせて確認しておきましょう。
複数店舗や過去の職歴を合算する場合のルール
1つの店舗での勤務期間が2年に満たない場合でも、過去の勤務経験を合算して通算2年以上となれば要件をクリアできるとされています。
たとえば、A店の惣菜部門で1年3か月、その後B店の鮮魚部門で9か月、それぞれ条件を満たして勤務した場合は、合計2年となり要件を満たします。この場合は、A店・B店のそれぞれから証明書を発行してもらいます。
合算を行う際の注意点
- 合算対象:過去に働いていた他のスーパー(惣菜・鮮魚部門等)や、飲食店、給食施設などでの調理実務経験
- 証明書の用意:勤務先ごとに1枚ずつ「調理業務従事証明書」を発行してもらう必要があります(2店舗で働いていた場合は計2枚提出)
- 重複期間の扱い:同じ時期に2か所でダブルワークをしていた場合、重なる期間を二重にカウントすることはできないと考えられます。取り扱いは自治体によって異なる可能性があるため、窓口に確認してください
参考:
公益社団法人調理技術技能センター|令和8年度調理師試験
静岡県|令和8年度調理師試験のお知らせ
▼一緒に読みたい記事
スーパー勤務での実務経験の考え方を押さえたところで、調理師免許全体の取得ルートも整理しておくと安心です。実務経験を積んで試験に合格するルートと、調理師養成施設に通うルートの違いを比較しながら解説しています。自分のキャリアに合う進め方を検討する参考にしてください。
■ 労働条件を確認したら、働き方の選択肢も広げてみませんか
実務経験の条件を満たせそうだと分かった方は、資格取得後の働き方や職場選びについても早めに情報収集しておくと安心です。カラフルエージェント飲食は、店長・SVをはじめとした飲食求人をご紹介する飲食業界専門の転職エージェントです。転職活動に関する相談もでき、未経験からベテランまで希望にマッチした求人をご提案します!
▼カラフルエージェント飲食へのお問い合わせはこちら
3.スーパーで「調理業務従事証明書」を作成してもらう際の手順

調理師試験の出願時には、勤務先が作成した「調理業務従事証明書」の提出が必要です。
証明書は、施設長(勤務先施設の長または法人代表者)が作成するもので、受験者本人が記入や修正を行うことはできません。スムーズに発行を受けるための実務的な流れを解説します。
発行の依頼先(店長・工場長・本社人事部)
証明書の作成依頼は、所属する店舗の組織体制に応じて適切な部署や担当者に行います。
- 店舗窓口への相談
- まずは直属の上司や店長、部門責任者(惣菜チーフなど)に調理師試験を受験する旨と証明書発行の希望を伝えます。
- 本社手続きの確認
- チェーン展開しているスーパーの場合、店舗側で直接押印できず、本社の総務部や人事部がまとめて証明書を発行・押印する運用となっている場合があります。
- 必要書類の提出
- 受験する年度の指定様式を、都道府県または試験実施機関の公式サイトからダウンロードして印刷します。記入例や注意事項もあわせて渡し、社内規定の手続きに従って依頼します。
記入時の注意点と代表者印の必要性
調理業務従事証明書は公的な証明書類であるため、記入漏れや不備があると出願が受理されない場合があります。
厚生労働省の通知でも、証明印について個人の場合は市区町村に登録された印鑑、法人が証明する場合は登記所に提出された印鑑を求める扱いがあるとされています。
- 証明者印の種類
店舗のゴム印や店長個人の私印では受理されない場合があります。調理技術技能センターの受験案内では、法人が証明する場合は職印または登記された印鑑を押印し、登記された印鑑を用いる場合は印鑑証明書を添付することとされています。 - 業務内容の記述欄
職種名が「店舗スタッフ」「販売員」などと抽象的だと、調理業務に従事していたことが伝わりにくくなります。「惣菜部門における調理・仕込み業務」「鮮魚部門での魚介類加工・調理」など、調理行為を行っていたことが明確に伝わる記述にしてもらうと安心です。
▼一緒に読みたい記事
実務経験の要件や証明書の手続きが見えてくると、次に気になるのは資格取得後の収入面ではないでしょうか。調理師の平均年収や、資格・転職・独立によって収入を上げていく具体的な方法を、公的データをもとに整理しています。将来のキャリアをイメージする材料として参考にしてみてください。
すでに退職している店舗へ依頼する場合の対処法
過去に勤務していたスーパーの経験を合算したい場合、すでに退職した店舗であっても証明書の発行を請求できるとされています。
退職先の店舗または本社の総務・人事担当宛てに連絡を入れ、「〇年〇月〜〇年〇月まで勤務していた元従業員であること」「調理師試験受験のために調理業務従事証明書の発行をお願いしたいこと」を伝えます。
郵送でやり取りを行う場合は、返信用封筒(切手貼付済)と指定様式、身分証明書のコピー等を同封して送付するのが丁寧です。
万が一、店舗の閉店や倒産によって連絡が取れない場合は、自己判断せずにお住まいの都道府県の調理師試験担当窓口へ相談してください。
厚生労働省は令和6年3月、勤務先の都合で証明書を取得できない受験希望者について、都道府県が事実関係を確認したうえで第三者証明など柔軟な対応を行えるよう事務連絡を改正しています。
勤務先の都合で証明書を出してもらえない場合も、あきらめずに窓口へ相談してみましょう。
参考:
総務省|調理師試験の受験に必要な「調理業務従事証明書」を取得できない場合の対応
公益社団法人調理技術技能センター|調理業務従事証明書のいろいろな事例について
4.調理師免許の実務経験に関するよくある質問

スーパー勤務者から寄せられることの多い実務経験に関する疑問について、Q&A形式で解説します。
-
1か月以上休職していた期間がある場合、実務経験の2年はどう数える?
-
調理技術技能センターが試験を実施する都県では、勤務先で1か月以上の長期休暇がある場合、その期間を除いて2年以上の従事期間が必要とされています。
在籍期間が2年を超えていても、長期間勤務していなかった期間があると、その分だけ必要な期間が延びる点に注意が必要です。取り扱いは都道府県によって異なる場合があるため、受験予定の都道府県の案内で確認してください。
-
実務経験の2年は、試験日の時点で満たしていればよい?
-
調理技術技能センターが試験を実施する都県では、調理業務従事証明書の証明日現在で2年以上の実務経験が必要とされています。試験日ではなく、証明日の時点が基準となります。
試験日までに2年に達する見込みであっても、証明日の時点で満たしていなければ受験できない点に注意してください。そのほかの道府県で受験する場合は、各自治体の受験案内で確認してください。
-
派遣社員としてスーパーで調理業務をしていた場合、実務経験として認められる?
-
雇用形態が派遣社員であることのみを理由に対象外となるわけではなく、実際に惣菜・鮮魚部門などで調理業務に従事し、週4日以上・1日6時間以上といった労働条件を満たしていれば、実務経験として認められる可能性があります。
ただし、派遣社員の場合、実際の雇用主である派遣元と、勤務していた現場である派遣先のどちらが調理業務従事証明書を発行するかは、自治体によって取り扱いが異なる場合があります。
どちらが証明を行うべきかは、出願前に必ず受験を予定する都道府県の窓口へ確認してください。
▼一緒に読みたい記事
調理師免許の取得を目指す方の中には、そもそも料理人としてどのくらい稼げるのか気になる方も多いはずです。職場やジャンルによる年収の違いや、収入アップにつながる具体的な工夫について解説しています。将来設計の参考にご覧ください。
■ 疑問が解消したら、次の一歩を相談してみましょう
証明書の手続きや働き方に関する疑問が解消できた方は、実際の転職活動について転職エージェントに相談してみるのも一つの方法です。カラフルエージェント飲食は、店長・SVをはじめとした飲食求人をご紹介する飲食業界専門の転職エージェントです。転職活動に関する相談もでき、未経験からベテランまで希望にマッチした求人をご提案します!
▼カラフルエージェント飲食へのお問い合わせはこちら
5.まとめ:スーパー勤務でも調理師免許の実務経験は目指せる
スーパーの惣菜・鮮魚部門での調理業務は、雇用形態を問わず調理師試験の実務経験として認められる可能性があります。
一方で、品出し・レジ・清掃のみの担当や、精肉部門での切り分け・加工、惣菜部門でも既製品を開封・加温・盛り付けるだけといった簡易な作業のみの場合は、対象外となる可能性がある点に注意が必要です。
労働条件については、厚生労働省の通知で「週4日以上・1日6時間以上」という基準が示されていますが、実際の運用は都道府県ごとに異なる場合があるため、出願前に受験予定の自治体窓口へ確認することが大切です。
調理業務従事証明書の発行は、店舗の窓口や本社人事部への相談から始まります。
複数店舗の経験を合算する場合や、退職済みの店舗へ依頼する場合の手順もあわせて確認しておくと、出願準備をスムーズに進められます。
▼一緒に読みたい記事
調理師免許取得の準備と並行して、実際にどんな職場で働くかを考え始めている方もいるでしょう。希望条件別の職場タイプの選び方や、転職で後悔しないためのチェックポイントをまとめています。今の職場探しにあわせて参考にしてみてください。

