「飲食店長になりたいけれど、資格は必要なのか?」
「未経験からでもなれるのか?」
現在、飲食店のアルバイトとして働いている方や、異業種からの転職を考えている方にとって、店長への道のりは具体的に見えにくいものです。
検索しても「未経験歓迎」という求人が多い一方で、「ブラックできつい」という噂も耳にするため、キャリアへの不安を感じているケースは少なくありません。
飲食店長になるために特別な学歴や国家資格(調理師免許など)は必須ではありません。しかし、店舗を運営する責任者として、法律で定められた「設置義務のある資格」は存在します。
本記事では、厚生労働省の統計データや関連法令に基づき、飲食店長になるための具体的なステップ、必須資格、そして気になる年収の現実について解説します。
- 飲食店長になるには?代表的な3つのルート
- 飲食店長に「必須」の資格と法的要件
- 年収の現実と「稼げる店長」になる方法
1. 飲食店長になるには?代表的な3つのルート
飲食店長になるための3つのルート比較
① 内部昇格(アルバイトからのステップアップ)
② 転職・中途採用(店長候補)
③ 独立開業(オーナー店長)
飲食店長になるためのルートは主に3つあります。
現在の自身の状況(アルバイト、正社員、異業種など)に合わせて最適な道を選ぶことが重要です。
① 内部昇格(アルバイトからのステップアップ)
メリット
店舗のオペレーションや企業文化を熟知しているため、ミスマッチが少ないです。
注意点
経営知識や労務管理の研修が不十分なまま昇格し、現場作業だけで疲弊する「名ばかり店長」になるリスクがあります。
自発的に数値管理に関わる姿勢が重要です。
飲食業界で最も一般的なルートです。「アルバイト → 時間帯責任者(リーダー) → 正社員登用 → 副店長 → 店長」という段階を踏みます。
現場や企業文化を熟知しているためミスマッチが少ない点はメリットです。
しかし、十分な研修がないと現場業務だけで疲弊する「名ばかり店長」になるリスクもあるため、自発的に数値管理などを学ぶ姿勢が不可欠です。
② 転職・中途採用(店長候補)
メリット
高水準給与
正社員スタート
求められる人材
数値管理能力
リーダーシップ
注意点
昇格試験の壁
副店長止まり
異業種でのマネジメント経験や、他店での経験を活かして「店長候補」として入社するルートです。
飲食業界の有効求人倍率は高く、売り手市場が続いています。
最初から正社員として高水準の給与でスタートできるメリットがありますが、調理技術よりも数値管理やリーダーシップなどのマネジメント能力が重視されます。

ただし、入社後の昇格試験に合格しなければ、長期間副店長止まりになるリスクもあるため注意が必要です!
③ 独立開業(オーナー店長)
メリット
利益の独占
決定権の自由
注意点
全責任・ハイリスク
対策:のれん分け制度
自ら資金を調達し、自分の店を持つ方法です。
利益と決定権のすべてを自分で持てる点が大きなメリットですが、その反面、全責任を負うハイリスクな選択でもあります。
そのため、企業のノウハウやブランド力を借りられる「のれん分け制度」を活用し、リスクを軽減するのも一つの有効な手段です。
2. 飲食店長に「必須」の資格と法的要件
ここは、多くの情報源において曖昧にされがちな重要なポイントです。
飲食店長になる際、調理師免許は「推奨」ですが、以下の2つは法律により店舗に設置義務がある(=事実上の必須)資格です。
① 食品衛生責任者(※必須)
飲食店を開業・運営する場合、食品衛生法第51条(公衆衛生上必要な措置)に基づき、各施設に必ず1名の「食品衛生責任者」を置くことが義務付けられています。
取得方法
各都道府県の食品衛生協会が実施する「養成講習会(約6時間)」を受講すれば取得可能です。
免除要件
調理師、栄養士、製菓衛生師等の国家資格を持っている場合は、講習なしで責任者になれます。
【重要】「食品衛生管理者」との違いに注意
よく混同されますが、国家資格である「食品衛生管理者」は、乳製品や食肉製品の製造業に必要な資格であり、一般的な飲食店長には求められません。
| 項目 | 食品衛生責任者 | 食品衛生管理者 |
|---|---|---|
| 対象施設 | 飲食店、喫茶店などほぼ全ての施設 | 食肉製品、全粉乳などの製造施設 |
| 法的根拠 | 食品衛生法 第51条 | 食品衛生法 第48条 |
| 店長の必要性 | 必須(1店舗に1名) | 通常は不要 |
② 防火管理者(※店舗規模による)
防火管理者の選任基準と区分
30人
以上
収容人員
(従業員含む)
300㎡以上
店舗の延べ面積
(比較的大型)
300㎡未満
店舗の延べ面積
すべての店舗で必須ではありませんが、消防法第8条により、一定規模以上の店舗では選任が義務付けられています。
キャリアアップして中規模以上の店舗を任される場合、この資格がないと店長になれないケースがあるため、早めの取得が推奨されます。
③ その他推奨される資格・スキル
調理師免許
必須ではありませんが、食品衛生責任者の講習が免除されるほか、専門性の証明になります。
日商簿記(3級・2級)
店長の最重要業務である「PL(損益計算書)管理」や利益計画において強力な武器になります。
調理師免許は必須ではないものの、取得すれば専門性の証明となり食品衛生責任者講習も免除されます。
さらに、店長の最重要業務であるPL(損益計算書)管理や利益計画を遂行する上で、日商簿記(3級・2級)の知識は武器となります。
3.年収の現実と「稼げる飲食店店長」になる方法
「飲食業は稼げない」というイメージがありますが、データを見ると必ずしもそうではありません。
飲食店の平均年収データ

厚生労働省の統計データなどから推計すると、飲食サービス業の一般的な年収ボリュームゾーンは300万円台半ば〜400万円程度です。
これは全産業平均(約458万円)と比較すると低い水準ですが、ここには小規模店や非正規雇用も含まれています。
年収600万円以上も可能な「大手チェーン」

上場企業クラスの大手チェーン店長であれば、年収500万〜600万円を超えるケースも珍しくありません。
コメダホールディングス(平均約974万円)やスシローグローバルホールディングス
(平均約848万円)といった持株会社(本社勤務含む)のように、高水準の報酬を実現している企業も存在します。
結論
「どの企業の店長になるか」と「その後のキャリア(SVやエリアマネージャーへの昇進)」次第で、高収入は十分に実現可能です。
参考|doda:平均年収情報
参考|ダイヤモンド・オンライン:年収が高い外食企業ランキング2024【96社完全版】スシロー・くら寿司・はま寿司の年収序列は?
4. 2024年以降、店長に求められるのは「DXスキル」
これからの店長に求められるのは、「美味しい料理を作る」「笑顔で接客する」ことだけではありません。現代の店舗運営における最大の課題は、人手不足と原材料高騰への対応です。
2024年の調査でも、店長が最も負担に感じている業務の一つが「シフト作成・調整」であることがわかっています。
ITツールを使いこなす能力(ITリテラシー)
これからの「優秀な店長」の条件は、DX(デジタルトランスフォーメーション)ツールを使いこなすことです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)ツール
- AI発注システム
- シフト管理アプリ
- POSデータ分析
AI発注システムで需要を予測して在庫ロスを防ぎつつ、シフト管理アプリで調整業務の手間を大幅に削減できます。
さらに、POSデータ分析を用いて売れ残り商品などを論理的に排除することで、店舗の利益率を効率的に向上させることが可能です。
根性論で長時間労働をするのではなく、ツールを使って効率化し、空いた時間でスタッフ教育や接客の質を高められる人材が、市場価値の高い店長となります。
5.飲食店店長はゴールではなくスタート
飲食店長になるには、特別な才能は必要ありませんが、「食品衛生責任者」などの法的資格と、「数値管理・ITスキル」が不可欠です。
まずは現在の職場でリーダー経験を積むか、未経験歓迎の大手チェーンの求人を探すことが、キャリアを拓く第一歩となります。
店長経験を通じて得られる経営視点やマネジメント能力は、将来的にスーパーバイザー(SV)や独立開業、あるいは異業種への転職においても武器となります。

