飲食業界への転職を考えたとき、「転職フェア」は効率的な選択肢の一つです。
多くの求人情報があふれる中で、求人票の文字だけでは分からない「職場の実際の雰囲気」や「働きやすさ」を、自分の目で確かめられる貴重な機会となります。
しかし、ただ参加するだけでは、その機会を最大限に活かすことはできません。
この記事では、飲食業界の転職フェアに参加するメリットから、服装や持ち物などの具体的な準備、そして当日企業ブースで確認すべき質問例まで幅広く解説します。
- 飲食業界の転職フェアに参加するメリットとデメリット
- 参加前に準備すべき服装や持ち物のリスト
- 転職フェア当日の流れと、企業ブースで聞くべき質問例
1.飲食業界の転職フェアに参加するメリットは?
参加するメリット
1日でたくさんの企業と直接話せる
求人票では分からない「職場の雰囲気」が分かる
未経験でも歓迎される仕事が見つかりやすい
転職フェアには、Webサイトや求人票だけでは得られない対面ならではのメリットが多数あります。
多くの企業を1日で効率的に比較できるだけでなく、採用担当者と直接話すことで、求人票の文字だけでは伝わらない「職場のリアルな雰囲気」を肌で感じ取れます。
未経験からの転職不安もその場で相談できる、貴重な機会となるでしょう。
メリット1:1日でたくさんの企業と直接話せる
転職フェア最大のメリットは、「効率性」です。
通常、在職しながら複数の企業に応募すれば、その都度、面接日程を調整し、個別に会社を訪問する必要があります。その場合、多くの時間と手間、交通費がかかります。
しかし転職フェアなら、1日で多くの飲食企業の採用担当者と直接対話が可能です。
Webだけでは分からない各社の雰囲気の違いをその場で比較したり、業界の最新動向をまとめて把握したりできます。
また、一般の求人サイトではあまり見かけないBtoB企業や、特定の分野に強みを持つ隠れた優良企業に偶然出会えるチャンスがあるのも大きな魅力です。
メリット2:求人票では分からない「職場の雰囲気」が分かる
求人票で分かるのは、給与や勤務時間、休日日数といった「条件面」が中心です。
もちろんそれらも重要ですが、文字情報だけでは、その企業が持つ「社風」や「人の温度感」までは読み取れません。
しかし、長く働き続けるためには、「どんな人が働いているか」「どんな雰囲気の職場で日々を過ごすか」といった「人」や「環境」との相性が非常に重要です。
転職フェアでは、採用担当者の表情、話し方、言葉の選び方や熱意、さらにはブース全体の雰囲気から、その企業のリアルな「空気感」を肌で感じ取ることができます。

その企業の「空気感」を感じることは、入社後のミスマッチを防ぐ上で大切なポイントです。
メリット3:未経験でも歓迎される仕事が見つかりやすい
飲食業界の有効求人倍率 (令和7年9月)
飲食物調理従事者
全産業(平均)
飲食業界は、慢性的な人手不足です。厚生労働省のデータ(令和7年9月分)によると、「飲食物調理従事者」の有効求人倍率は2.41倍と、全産業の平均1.10倍を大幅に上回っています。このことは求職者にとって有利な状況です。
この「売り手市場」を背景に、未経験者を歓迎する求人が多いのが特徴です。
「これまでの異業種での経験を活かせるか不安」「具体的にどんな仕事から始めるのか」「入社後の研修制度は?」といった、求人票だけでは分からない個別の疑問も、その場で採用担当者に直接相談できます。
不安を解消し、自分に合う職場かを見極められるのは大きな安心材料です。
2.参加する前に知っておきたいこと(デメリット)
転職フェアで注意すべき点
混雑していてゆっくり話せないことがある
人気企業はブースに行列ができる
多くのメリットがある一方で、転職フェアには注意すべき点もあります。
当日に「こんなはずではなかった」と戸惑うことがないよう、あらかじめどのようなことが起こり得るかを把握しておくことが重要です。

事前に注意点を理解し対策を立てておくことで、転職フェアをより有意義な時間にしていきましょう。
デメリット1:混雑していてゆっくり話せないことも
大規模な転職フェアほど会場全体が活気に満ちていますが、その反面、混雑によって一つのブースでじっくりと話を聞く時間が限られてしまうことがあります。
採用担当者一人に対して複数の参加者が列を作ることも珍しくなく、十分な質問時間が確保できないまま、次の人に交代しなければならないケースも考えられます。
特に、多くの人が来場する午後になると混雑はピークを迎えがちです。そのため、比較的空いている午前中の早い時間から訪問することをおすすめします。
また、「せっかく来たのに、聞きたいことが聞けなかった」という事態を避けるため、質問事項をまとめておくとよいでしょう。
ブースでしっかり話を聞くための2つの準備
- 比較的空いている午前中の早い時間から訪問
- 質問事項をまとめておく
デメリット2:人気企業はブースに行列ができる
知名度の高い大手チェーンや、休日・給与などの好条件を提示している人気の企業ブースには、開始直後から行列ができることも少なくありません。
飲食業界は「売り手市場」とはいえ、働きやすさやブランド力を求める求職者の関心は、特定の人気企業に集中しがちです。
一つのブースで説明を聞くために30分以上待つケースもあり、その間、他の優良企業ブースを訪問する貴重な時間を失ってしまいます。
転職フェアは限られた時間との戦いのため、当日、「どの企業から回るか」と迷うのは避けたいところです。
「絶対に話を聞きたい企業」と「時間があれば立ち寄りたい企業」を明確に分け、訪問リストを事前に作成し、あらかじめ話を聞きたい企業の優先順位を明確に決めておく。それが効率的にまわるための鍵となります。
効率的にまわるポイント
- 訪問リストを事前に作成
- 話を聞きたい企業の優先順位を明確に決めておく
3.転職フェア参加の準備|服装や持ち物リスト

「転職フェアに初めて参加するけれど、何を着ていけばいい?」「何を持っていけばいい?」という不安は多いものです。
ここでは、服装や持ち物などの基本的な準備について解説します。
当日を有意義な時間にするために、事前にしっかりと準備をしておきましょう。
服装は「スーツ」か「きれいめな私服」が基本
服装の選択肢
スーツの場合
最も無難で、真剣度も伝わりやすい選択です。
私服(ビジネスカジュアル)の場合
襟付きのシャツやブラウスに、ジャケットを羽織るスタイルが基本です。清潔感を第一に考えましょう。
転職フェアの服装に厳格なルールはありませんが、「服装自由」と書かれていても、Tシャツやジーンズ、サンダルといったラフすぎる格好は避けるべきです。
あくまで企業と出会う「ビジネスの場」であり、採用担当者はあなたのTPOを判断する意識を見ています。
基本は、リクルートスーツが最も無難で、真剣度も伝わります。
もし「私服可」や「ビジネスカジュアル」と指定されている場合は、襟付きのシャツやブラウスにジャケットを羽織る、チノパンやスラックスを合わせるといった「きれいめな私服」が望ましいでしょう。
どちらを選ぶにせよ、清潔感を第一に、失礼のない服装を心がけることが大切です。
飲食業界ならではの服装のポイント
飲食業界の転職フェアでは「清潔感」が重視されます。
これは、お客様に「食」という安全・安心が求められる商品を扱う業界だからです。
スーツやシャツにしわや汚れがないか、靴は磨かれているかはもちろん、髪型や(男性であれば)髭は整っているか、爪は清潔かなど、細部まで徹底的にチェックしましょう。
採用担当者は「この人がそのまま店舗に立っても、お客様に不快感を与えないか」という厳しい目で見ています。
細部まで清潔感を意識することが、他の業界以上にあなたの信頼性を伝える評価ポイントとなります。
服装のポイント
スーツやシャツにしわや汚れがないか
靴は磨かれているか
髪型
男性であれば髭は整っているか
爪は清潔か
必須の持ち物と、あると便利なもの
必須の持ち物とあると便利な物をピックアップしました。
転職フェア当日に慌てないよう、持ち物は前日までに準備しておきましょう。
必須なのは、企業パンフレットが折れずに入るA4バッグ、担当者の話や気になった情報をすぐに書き留める筆記用具とメモ帳、スマートフォンのモバイルバッテリーです。
また、企業に真剣度を伝えるため、履歴書・職務経歴書のコピーも数セットあるとベストです。
その他、あると便利なものとして、受け取った書類をきれいに保つクリアファイル、交通費支給の手続きで稀に必要な印鑑、社会人経験者であれば名刺も用意しておくとスマートです。
必須の持ち物
- A4サイズが入るバッグ(企業パンフレットをもらうため)
- 筆記用具とメモ帳(気になったことをすぐにメモするため)
- (持っていれば)履歴書・職務経歴書のコピー数部
- スマートフォンの充電器・モバイルバッテリー
あると便利なもの
- クリアファイル(書類をきれいに保つため)
- 印鑑(交通費支給など、手続きで必要な場合があるため)
- 名刺(社会人経験がある場合)
4.当日の流れと企業ブースでの攻略法
企業ブースの攻略法
会場マップで全体を把握
質問リスト例
避けたほうがよい質問の把握
転職フェアを最大限に活用するためには、当日の動き方にもコツがあります。
限られた時間で多くの情報を得るには、行き当たりばったりではなく、効率的な「流れ」を意識することが重要です。
また、企業ブースでの「攻略法」、つまり、どのように対話し、何を確認するかという振る舞い方が、転職成功の鍵を握ります。
まずは会場マップで全体を把握
会場に到着したら、まず入口で配布される会場マップや出展企業一覧を必ず受け取りましょう。
これが、限られた時間を有効に使うための「作戦図」となります。
あらかじめ訪問したい企業を決めている場合は、そのブースの場所をマップで確認し、訪問の優先順位とルートをシミュレーションしておくとよいでしょう。
特に決めていない場合でも、まずは全体を軽く一周し、どのエリアにどんな業態(カフェ、レストラン、居酒屋など)の企業が集まっているかを把握することで、スムーズにまわれます。
ブースの活気や雰囲気を比較しながら歩くことで、業界全体の動向を掴んだり、直感的に「良さそう」と感じる企業と思わぬ出会いがあったりするため、この「全体把握」はとても大切です。
全体把握のメリット
- 訪問順番のシミュレーションができる
- スムーズに会場を見てまわれる
- 業界全体の動向を掴める
- 直感的に「良さそう」と感じる企業と思わぬ出会いがある
企業ブースで聞くべき「質問リスト」の例
採用担当者と話す際は、受け身にならず「質問」を準備していくことが重要です。
良い質問は、熱意の表れとして評価されると同時に、自分と企業との相性を見極めるための重要な材料となります。
求人票の確認だけでなく、「具体的な業務内容」や「1日の典型的なスケジュール」、「未経験から入社した場合の研修制度」など、働く姿を具体的にイメージできる質問をしましょう。
さらに、「職場の雰囲気や年齢層」、「店長やマネージャーへのキャリアパス」といった、入社後のミスマッチを防ぐための踏み込んだ質問も大切です。
質問リスト例
- 求人票では「〇〇」と拝見しましたが、具体的にはどのような業務内容になりますか?
- 未経験から入社された方は、どのような研修を経て一人前になられていますか?
- (もし可能であれば)職場の雰囲気や、働いている方々の年齢層を教えていただけますか?
- 店長やマネージャーに昇進される方は、どのようなキャリアパスを歩まれていますか?
- 1日の仕事の典型的なスケジュール(流れ)を教えていただけますか?
避けたほうがよい質問(NG例)
逆に、ブースを訪問して早々、いきなり「給与」「残業時間」「休暇の日数」といった待遇面のことばかりを質問するのはNGです。
採用担当者から「仕事内容そのものに興味がないのでは?」「条件さえ良ければどこでもいいのか」と、熱意や意欲を疑われてしまう可能性があります。
もちろん、待遇や福利厚生は長く働く上で重要な情報です。
しかし、それらはまず企業の理念や具体的な仕事内容、キャリアパスなどへの関心を示した後にしましょう。

「業務内容について理解が深まった上で、働き方についてもお伺いしたいのですが」といった形で、タイミングを見計らって確認するのがスマートな方法です。
5.飲食業界への転職に関するよくある質問
よくある質問
未経験でも参加して大丈夫?
履歴書は絶対に必要?
その場で内定が出ることはある?
最後に、飲食業界の転職フェアに関して、参加者が抱きやすい疑問や不安についてお答えします。
参加を検討している段階で生じる素朴な疑問から、当日の振る舞いに関する具体的な悩みまで紹介します。
ここでスッキリ解消し、安心して当日を迎えられるように準備しておきましょう。
Q1:未経験でも参加して大丈夫?
A1:全く問題ありません。むしろ、未経験者こそ積極的に参加するべきです。
飲食業界は人柄やポテンシャルを重視し、未経験者を歓迎する企業が多いのが特徴です。
特に転職フェアは、Webの求人票では分かりにくい「具体的な仕事内容」や「入社後の研修・教育体制」について、採用担当者から直接詳しく聞ける絶好の機会となります。
企業側も「まずは自社の魅力を知ってほしい」というスタンスで出展しているため、「まずは話を聞くだけ」という方でも歓迎されます。

異業種からの転職で不安な点を確認する場として、気軽にブースを訪ねてみてくださいね。
Q2:履歴書は絶対に必要?
A2:転職フェアは「まず話を聞く場」でもあるため、履歴書を「必須」としていないケースも珍しくありません。
ただし、転職フェアであっても履歴書は持参がおすすめです。
履歴書があれば、採用担当者があなたの経歴やスキルをその場で把握できるため、「こんな仕事が向いているのでは」と具体的な提案をしてくれるなど、話がスムーズに進みます。
また、多くの参加者の中で履歴書を準備していることは、「本気で転職を考えている」という熱意の証明となり、本気度が高いと好印象を持たれます。
場合によっては、その場で「ぜひ次の選考(面接)へ」と話が進むことも。その際にコピーを数セット用意しておけば、すぐに渡すことができ、貴重なチャンスを逃しません。

履歴書は絶対に必要なものではないですが、持参するメリットがたくさんあるので、ぜひ持っていきましょう!
Q3:その場で内定が出ることはある?
A3:転職フェア当日に、その場で内定まで決まることはレアケースです。
正規の採用プロセスには、通常、複数回の面接や適性検査が含まれるからです。
しかし、内定には至らなくとも、「選考のショートカット」につながることはよくあります。
例えば、「書類選考と一次面接を免除して、後日すぐに最終面接」といったケースです。
企業側も多くの時間と採用コストをかけて参加しています。そのため、ブースでの対話を通じて「ぜひうちで働いてほしい」と感じる良い人材がいれば、他社に取られる前に積極的に次のステップへ進めたいと考えています。

当日の対話が実質的な一次面接の場となる可能性を意識し、しっかり準備して臨みましょう。
6.万全の準備で転職フェアに臨もう
飲食業界の転職フェアは、求人票だけでは分からない「職場の雰囲気」や「働きやすさ」を直接確認できる絶好の機会です。
特に飲食業界が「売り手市場」である今、多くの企業と効率的に出会えるメリットは大きいと言えます。
当日の服装や持ち物といった準備はもちろん重要ですが、大切なのは「自分は何を大切にして働きたいか」を整理し、「それを確認するための質問」を準備していくことです。
ぜひ、この記事で解説したポイントを参考に準備を整え、自身にとって最適な職場を見つけるための有意義な一日にしてください。