飲食業からの転職を考え始めたものの、将来への不安や「飲食の経験しか通用しないのでは」という悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか?
飲食業で培った経験は、業界の内外を問わず価値ある「ポータブルスキル」という資産です。
その価値を正しく言語化し、退職や失業保険といった法的なセーフティネットの知識を持つことで、誰もが戦略的にキャリアを転換できます。
この記事では、飲食経験を「強み」に変えるキャリア戦略と、転職を成功させるための具体的な道筋、安心して次へ進むための法知識を解説します。
- 飲食業界の経験で得られる「ポータブルスキル」の言語化の方法
- 「業界内キャリアアップ」と「異業種キャリアチェンジ」の具体的な道筋
- 円満退職の進め方や失業保険など、転職時に必要な法務・労務の知識
1.飲食業界から転職を考える理由

飲食業界からの転職を考える背景には、共通した悩みがあることが少なくありません。
転職を考える主なきっかけ
- 土日祝日に休めない
- 長時間の立ち仕事で体力がきつい
- このままの給与で将来が不安
飲食業界からの転職理由は、主に「労働時間」「体力」「将来性」への不安です。
土日祝に休めず、友人や家族と生活リズムが合わないことへの孤独感。
長時間の立ち仕事や不規則な勤務を、年齢を重ねても続けられるかという体力的な限界。
さらに、給与が頭打ちになりやすく、店長以上のキャリアパスが見えにくいといった待遇面や将来への不安が、転職を考える主なきっかけとなっています。
2.転職活動の前に|飲食経験で得られる「ポータブルスキル」とは

まずは飲食経験で得られた「強み」を正しく認識することが不可欠です。
飲食業はスキルの宝庫
飲食業は「誰でもできる」と思われがちですが、実際には高度なスキルが求められる仕事です。
これらは業種や職種が変わっても通用する「ポータブルスキル」 と呼ばれます。
飲食経験で得られる具体的な「ポータブルスキル」とは
数値管理能力
売上や原価、利益率などの管理
人材マネジメント能力
アルバイトや部下の指導・育成
高度な対人折衝能力
さまざまなお客様の対応、クレーム対応
課題解決能力
限られた人員や時間の中で効率よく店舗を運営するための工夫
店長やリーダー経験者は、売上や原価、利益率といった「数値管理能力」や、アルバイトや部下を指導・育成する「人材マネジメント能力」を高いレベルで実践しています。
また、日々さまざまなお客様に対応し、時にはクレーム対応も行う中で「高度な対人折衝能力」が培われます。
限られた人員や時間の中で効率よく店舗を運営するために行う工夫は、そのまま「課題解決能力」としてアピールできます。

これらのポータブルスキルは、あらゆるビジネスで求められる重要なスキルです!
3.飲食業からの転職先|2つの選択肢
2つの選択肢
飲食業界からの転職には、大きく分けて2つの道があります。
1つは、労働環境や待遇の良い企業を求め、経験を活かして飲食業界内でステップアップする「業界内キャリアアップ」。
もう1つは、飲食業界を離れ、培ったスキルを活かして新しい分野に挑戦する「異業種キャリアチェンジ」です。
道筋①飲食業界内でキャリアアップを目指す
飲食業界自体は好きであるものの、今の環境を改善したいと思う方もいるでしょう。その場合、業界内での転職が有効な選択肢となります。
待遇改善・労働環境の整備が進む背景(売り手市場)
現在、飲食業界は深刻な人手不足を背景に「売り手市場」 となっています。
厚生労働省の「一般職業紹介状況」によれば、飲食サービス業の有効求人倍率は高い水準で推移しています。
大手企業を中心に、完全週休2日制の導入や残業時間の削減、給与水準の引き上げなど、労働環境の整備が急速に進んでおり、優良企業を選びやすくなっています。

飲食業界では、働きやすい環境づくりが少しずつ進んでいます。
優良企業を効率的に探すには、飲食業界に特化した転職エージェントを活用するのも一つの方法です。
業界の内部事情に詳しいアドバイザーが、待遇や労働環境の整った求人を個別に紹介してくれる場合があります。
キャリアパス例
キャリアパス例
- 店長
- スーパーバイザー
- 本部職
現場の店長や、複数店舗を統括するスーパーバイザー(SV) への道だけでなく、現場経験を活かして商品開発、マーケティング、人事といった「本部スタッフ」 へキャリアチェンジする道もあります。
業界内転職で評価される資格(調理師免許、ソムリエ等)
調理師免許やソムリエ資格などは有効なアピールポイントとなり、キャリアアップや好待遇での転職に直結します。

資格をお持ちの方は、応募時にしっかりとアピールすることをおすすめします。
道筋②飲食経験を武器に異業種へ挑戦
飲食業で培ったポータブルスキルは、異業種でも高く評価されます。
飲食業の経験が活かせる業界・職種は多岐にわたります。
異業種の具体例
- 営業職
- 販売サービス業
- 食品メーカー
- ITカスタマーサポート
具体例:営業職・販売サービス業
高い「対人折衝能力」や「課題解決能力」は、顧客のニーズを汲み取ることが重要な「営業職」や、小売などの「販売サービス業」で即戦力として活躍できます。
具体例:食品メーカー・ITカスタマーサポート
飲食店の現場を知っている強みを活かし、業務用食材を扱う「食品メーカー」の営業や飲食業界向けのITシステム(予約管理など)を扱う企業の「カスタマーサポート」なども有力な転職先です。
未経験転職を成功させる職務経歴書の書き方・面接対策
異業種への転職では、経験を「ポータブルスキル」として言語化することが鍵です。
職務経歴書には、単なる業務内容ではなく、「(課題)に対し(工夫・行動)を行い、(結果)を出した」という形で、具体的なエピソードと成果(可能なら数値)を記載しましょう。

職務経歴書に工夫を加えるだけで、採用の可能性は大きく高まるでしょう。
4.安心して飲食業から転職する|退職の法知識

転職活動を焦らず行うために、「辞め方」の知識をお伝えします。
円満退職の進め方と有給休暇の消化
法律上、退職の意思は2週間前に伝えればよいとされていますが、円満退職のためには就業規則に従い、1〜3ヶ月前に直属の上司に相談するのが一般的です。
残っている有給休暇を消化することは、労働者の権利です。引継ぎスケジュールと合わせて計画的に申請しましょう。
失業保険(雇用保険)はいつから貰える?
雇用保険に一定期間加入していれば、退職後に失業手当(基本手当)を受給できます。
自己都合退職の場合、申請から7日間の待期期間に加え、約2ヶ月間の給付制限期間があるため、すぐには受給できません。

この間の生活費を準備しておくことが重要です。
参考|厚生労働省:雇用保険制度
退職後の健康保険と年金の手続き
退職すると会社の健康保険や厚生年金から脱退することになります。そのため、国民健康保険・国民年金への切り替え、または家族の扶養に入る手続きが速やかに必要です。
参考:日本年金機構|会社を退職したときの国民年金の手続き・全国健康保険協会|会社を退職するとき
5.飲食経験は「強力な武器」自信を持って次の転職先へ
飲食業界からの転職は、決してネガティブなものではなく、キャリアを再構築する良い機会です。
飲食業で培った「マネジメント能力」や「対人折衝能力」は、業界の内外を問わず通用する大きな強みとなります。
価値を正しく言語化し、失業保険などのセーフティネットも活用しながら、ぜひ次の一歩を踏み出してみてください。