「飲食 上場企業」と検索する際、その目的は大きく二つに分かれます。
- 「投資家」として、企業の時価総額や売上高、将来性を知りたい。
- 「求職者」として、平均年収や安定性、キャリアパスを知りたい。
多くの情報サイトはどちらかに焦点を当てていますが、両方の視点から企業を総合的に分析することが不可欠です。
本記事では、公的データ(2024年度の有価証券報告書など)に基づき、飲食の上場企業を多角的に分析しています。
投資家と求職者、双方のニーズに応える2025年最新の網羅的な情報を順を追って解説します。
- 飲食上場企業の売上高、平均年収、時価総額を比較した2025年最新ランキング
- 飲食業界全体の市場動向と、人手不足や原材料高騰などの最新課題
- 求職者が飲食上場企業の「平均年収」データを見る際の注意点と、データの正しい読み解き方
1.飲食上場企業 総合ランキング(売上高・平均年収・時価総額)

飲食業界の主要上場企業を、投資判断と転職活動の両面から評価できる3つの重要指標で比較します。売上規模、従業員の待遇水準、市場からの評価をまとめた総合ランキングで、各社の実力を客観的に把握できます。
【総合比較表】飲食大手 主要企業マスターランキング(2025年版)
飲食業界の主要な上場企業を、「売上高」「平均年収」「時価総額」の3つの指標で比較します。
| 企業名(持株会社) | 主要ブランド | 売上高(億円) | 平均年収(万円) | 時価総額(億円) |
|---|---|---|---|---|
| (株)ゼンショーホールディングス | すき家, はま寿司, ココス | 11,366 | 816 | 14,980 |
| 日本マクドナルドホールディングス(株) | マクドナルド | 4,054 | ‐ (※) | 8,070 |
| (株)すかいらーくホールディングス | ガスト, バーミヤン, しゃぶ葉 | 4,011 | 734 | 6,672 |
| (株)コロワイド | かっぱ寿司, 牛角, 甘太郎 | 2,691 | 654 | 1,783 |
| (株)吉野家ホールディングス | 吉野家, はなまるうどん | 2,049 | 738 | 1,957 |
| (株)トリドールホールディングス | 丸亀製麺 | 2,682 | 812 | 4,024 |
| (株)力の源ホールディングス | 一風堂 | 341 | 502 | 427 |
| (株)サイゼリヤ | サイゼリヤ | 2,245 | 689 | 2,807 |
| (株)壱番屋 | カレーハウスCoCo壱番屋 | 610 | 612 | 1,457 |
| (株)王将フードサービス | 餃子の王将 | 1,110 | 578 | 2,039 |
※平均年収について有価証券報告書に記載なし。日本マクドナルドHDは持株会社です。記載の平均年収はHD所属従業員のものであり、店舗運営を行う事業会社(日本マクドナルド株式会社)の数値とは異なります。
参考|
金融庁EDINET:電子開示システム
日本経済新聞:飲食店業界(2025年11月10日)
2.飲食業界 上場企業トップ5社の詳細プロフィール
飲食業界 大手企業 5社
売上高ランキング上位5社について、事業の特徴と強みを詳しく解説します。各社が展開する主要ブランド、経営戦略、成長の原動力となっている独自の取り組みを理解することで、業界トップ企業の全体像が見えてきます。
①株式会社ゼンショーホールディングス(すき家、はま寿司)

「すき家」を筆頭に、国内外で多様な業態を展開する飲食業界の最大手です。
積極的なM&Aと海外展開が特徴で、食材の調達から加工、物流、販売までを一貫して行う「マス・マーチャンダイジング・システム」を強みとしています。
参考:
ゼンショーホールディングス|財務ハイライト
ゼンショーホールディングス|有価証券報告書
②日本マクドナルドホールディングス株式会社(マクドナルド)

世界的なファストフードチェーンの日本法人です。
圧倒的なブランド力とマーケティング戦略、効率化されたオペレーションが特徴です。デリバリーやデジタル戦略を推進し、安定した成長を続けています。
参考:日本マクドナルドホールディングス|財務指標サマリー(通期)
③株式会社すかいらーくホールディングス(ガスト、バーミヤン)

「ガスト」をはじめとするファミリーレストランを中核に、多様なブランドポートフォリオを持つ大手企業です。
コロナ禍を経た業態転換や、配膳ロボットの導入などDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を積極的に取り入れています。
参考:
すかいらーくホールディングス|業績ハイライト
すかいらーくホールディングス|有価証券報告書
④株式会社トリドールホールディングス(丸亀製麺)

「丸亀製麺」ブランドで国内外に急成長を遂げた企業です。
店内での製麺・調理というライブ感を重視した店舗づくりを特徴としています。高い顧客体験価値もあり、海外事業にも力を入れています。
参考:
株式会社トリドールホールディングス|事業報告
株式会社トリドールホールディングス|有価証券報告書
⑤株式会社吉野家ホールディングス(吉野家、はなまるうどん)

牛丼の「吉野家」とセルフうどんの「はなまるうどん」を二本柱とする老舗企業です。
長年培ったブランド力と効率的なオペレーションがあります。
参考:
株式会社吉野家ホールディングス|業績ハイライト
株式会社吉野家ホールディングス|有価証券報告書
3.飲食業界の市場規模と最新動向(2025年)

コロナ禍を経て回復基調にある飲食市場の現状と、2025年における最新トレンドを解説します。インバウンド需要の復活、デリバリー市場の定着、M&Aによる業界再編など、市場を動かす重要な変化を押さえておきましょう。
コロナ禍を経て、新たな成長局面に入る外食市場
飲食業界は、新型コロナウイルスの影響から力強く回復し、2025年現在、新たな成長局面に入っています。各種調査(日本フードサービス協会など)によれば、市場はコロナ禍以前の水準に近づきつつあります。
一方で、消費者の行動変容は定着し、デリバリーやテイクアウトの需要は高止まりしています。
また、インバウンド需要の完全な回復も市場を後押ししており、都心部や観光地を中心に活気が見られます。
M&Aや海外展開による業界再編の加速
国内市場の成熟と人手不足を背景に、飲食上場企業の間では業界再編の動きが活発化しています。大手資本によるM&A戦略は2025年に入っても継続して行っている状況です。
また、国内市場が飽和する中で、多くの大手企業が成長を成長を加速させるために海外進出を進めています。
4.飲食上場企業が直面する構造的な課題

飲食業界全体が抱える経営課題について、データに基づいて分析します。原材料費の高騰と深刻な人手不足は、上場企業であっても避けられない問題です。各社がどのような対策を講じているのか、業界の現実を理解することが重要です。
原材料費・光熱費の高騰
近年の世界的なインフレや円安の影響を受け、食材の仕入れコストや光熱費は高止まりしています。これは飲食店の利益率を直接圧迫する大きな課題です。
上場企業各社は、価格改定(値上げ)に踏み切っています。その一方で、仕入れルートの見直し、セントラルキッチンの活用による効率化、エネルギー効率の高い機器の導入などでコスト削減に取り組んでいます。
深刻な人手不足と賃上げ圧力
飲食業における人手不足の割合
飲食業界は、全産業の中でも特に人手不足が深刻な業種です(帝国データバンク調査など)。この人手不足は、店舗運営の制限だけでなく、人件費の高騰という形で経営に影響を与えています。
優秀な人材を確保するため、2025年も上場企業を中心に賃上げ(ベースアップ)や待遇改善の動きが広がっています。配膳ロボットの導入やセルフレジの普及も、この人手不足に対応するための一環です。
参考:帝国データバンク|人手不足に対する企業の動向調査(2024年4月)
5.飲食上場企業への転職を考える際のポイント

転職活動で企業情報を見る際に注意すべき重要なポイントを解説します。特に「平均年収」のデータは、持株会社と事業会社で大きく異なるため、正しい読み解き方を知らないと判断を誤る可能性があります。
「平均年収」を見る際の注意点(持株会社と事業会社)
ランキング表を見て、「A社は年収800万円なのに、B社は600万円だ」と単純に比較することはできません。特に注意が必要なのは、データの多くが「持株会社(ホールディングス)」のものである点です。
持株会社には、経営企画や財務、人事といった本社の管理部門の従業員のみが勤務していることが多いためです。そのため平均年収が高めに出る傾向があります。
一方で、実際に店舗で働くスタッフの多くは、給与体系が異なる「事業会社(〇〇ダイニング、〇〇フーズなど)」に所属しています。
データの信頼性を判断する方法(有価証券報告書の活用)
転職口コミサイトの年収情報は個人の主観や特定の事例を基準としていることが多く、参考にはなりますが、客観的なデータとは言えません。
最も信頼できる情報は、金融庁の「EDINET」で誰でも閲覧できる有価証券報告書です。ここには「従業員の状況」という項目があり、企業(または持株会社)の平均年間給与、平均年齢、平均勤続年数が正確に記載されています。
人事労務管理の実務においても、これらの公的な開示情報は、企業の安定性や人材への投資姿勢を測る上で最も重要な指標の一つです。

平均勤続年数が極端に短くないか、平均年齢と給与のバランスはどうかといった点も併せて確認しましょう。
6.飲食業界の上場企業を判断するには
飲食業界の上場企業は、コロナ禍からの回復、業界再編、そして人手不足という影響を受けています。
投資家にとっては、これらの変化に柔軟に対応し、海外展開やDXを推進できる企業が魅力的な投資対象になります。
一方、求職者にとっては、待遇改善が進む今はチャンスです。
ただし、「平均年収」などの表面的な数字に惑わされてはいけません。
持株会社と事業会社の違いを理解し、有価証券報告書などデータを基準に考える必要があります。自身のキャリアプランに合う企業かを判断する視点が重要です。