今の飲食業界において「未経験であること」は不利になるどころか、むしろ歓迎される要素です。
なぜなら、データが示す通り、飲食業界は全産業の中で最も人手不足が深刻であり、企業は「スキルのある経験者」以上に「素直で長く働いてくれる人」を求めているからです。
本記事では、採用実務の知見を統合し、本当に求めている「志望動機」の作り方を解説します。
「家から近い」「稼ぎたい」といった本音を、採用したくなる「強み」に変換するテクニックや、そのまま使える職種別の例文も豊富に紹介します。
これにより、根拠のある応募書類を作成し、迷いなく面接に臨むことができるようになります。
- データで見る「未経験者」が飲食業界で今こそ歓迎される理由
- 「家から近い」「稼ぎたい」等の本音を好印象に変える言い換えテクニック
- 【職種・属性別】履歴書にそのまま使える志望動機例文集
1.なぜ今、未経験でも飲食業界が「狙い目」なのか?【市場データ解説】
飲食業界が「狙い目」なのか?
深刻な人手不足
「経験」より「人柄」
働き方の多様化
「未経験だから不安」と感じる必要は全くありません。
客観的なデータを見ると、現在は求職者が圧倒的に有利な「売り手市場」であることがわかります。
全業界で1位の人手不足率74.8%
帝国データバンクの2024年4月の調査によると、飲食店における非正社員の人手不足割合は74.8%に達しています。
これは全業種の中で最も高い数値です。
つまり、4店舗のうち3店舗は「喉から手が出るほど人が欲しい」状態にあります。

この状況下では、企業は経験の有無を選り好みする余裕はなく、未経験者に対して広く門戸を開いています。
参考|帝国データバンク:人手不足に対する企業の動向調査(2024年4月)
採用基準の変化。「経験」より「人柄」と「定着」
人手不足を背景に、企業の採用基準も変化しています。
かつては即戦力が求められましたが、現在は「未経験でも一から育てる」という方針の企業が増えています。
飲食店の現場では、独自のオペレーションや接客ルールがあるため、変に癖がついた経験者よりも、未経験者の方が「真っ白なキャンバス」として染まりやすく、教育しやすいと評価されるケースも少なくありません。

採用担当者が最も重視しているのは、「スキル」よりも「誠実さ」や「長く続けてくれそうか(定着性)」という点です。
時給アップと働き方の多様化
需給のバランスにより、飲食店の時給は上昇傾向にあります。
また、スキマ時間だけの勤務や、週休3日制の導入など、働き方の多様化も進んでいます。

労働環境は以前よりも改善されており、未経験からキャリアをスタートさせるには絶好のタイミングと言えます。
2.採用担当者が納得する「志望動機」作成の3ステップ
魅力的な志望動機を作るために、文章力は必要ありません。
以下の3つのステップで思考を整理するだけで、説得力のある内容が完成します。
Step 1 自己分析:過去の「心が動いた体験」を思い出す
まずは、「なぜ飲食なのか?」を考えますが、難しく考える必要はありません。
「以前利用したお店で、店員さんの笑顔に元気をもらった」「美味しい料理を食べて感動した」といった、消費者としての素直な体験で十分です。

ポジティブな感情の記憶は、仕事への熱意を裏付ける強力な根拠になります 。
Step 2 他社比較:「なぜこのお店か」を特定する
次に、「数ある飲食店の中で、なぜその店なのか」を明確にします。
可能であれば、応募前にお客さんとしてお店に行ってみることを強くお勧めします。
「スタッフ同士の仲が良さそうだった」「店内が清潔で居心地が良かった」など、現地で感じた具体的な感想は、他の応募者との差別化になります。

また、これは自分自身が「働きやすい職場か(ブラックバイトではないか)」を見極めるための重要な調査でもあります 。
Step 3 未来志向:「どう貢献したいか」を言語化する
最後に、「自分がどう貢献できるか」を伝えます。
ここで重要なのは、「勉強させてほしい」という受け身の姿勢ではなく、「早く仕事を覚えて戦力になりたい」という能動的な姿勢を示すことです。

未経験であっても、「元気な挨拶ができる」「体力には自信がある」「時間を守れる」といったポータブルスキル(持ち運び可能な能力)は立派な武器になります。
3.本音を強みに変える!ネガティブ理由の「ポジティブ変換」テクニック
ポジティブ変換テクニック
対応できる安定性
高い就労意欲
貢献したい意欲
「家から近いから」「時給が良いから」「楽そうだから」などは立派な志望理由ですが、そのまま伝えると「条件さえ良ければどこでもいいのか」と思われてしまいます。
キャリアコンサルティングの視点を取り入れ、これらの本音を「企業のメリット」に変換して伝えるテクニックを紹介します。
「家から近い」→「急なシフトにも対応できる安定性」
解説
「近い」という事実を、遅刻リスクの低さや、緊急時の対応力という「企業の安心材料」に変換します。
「生活費を稼ぎたい」→「明確な目標に向けた高い就労意欲」
解説
「稼ぎたい」という意欲は、裏を返せば「簡単には辞めない」という定着性のアピールになります。
「自立心」や「責任感」という言葉で補強しましょう。
「楽しそう・楽そう」→「お店の雰囲気に貢献したい意欲」
解説
「楽そう」を「私にもできる」ではなく、「私もその空間作りに貢献したい(参加したい)」という意欲に変換します。
4.【職種・属性別】そのまま使える志望動機例文集
ここからは、職種や応募者の属性に合わせた具体的な例文を紹介します。
これらをベースに、自分のエピソードを組み込んで調整してください。
カフェ・喫茶店 × 未経験
例文
「普段からカフェ巡りが趣味で、貴店の落ち着いた雰囲気とこだわりのコーヒーが大好きでした。
接客は未経験ですが、お客様として感じた『癒やし』を、今度は提供する側として届けたいと考えています。
持ち前の明るさと丁寧さを活かし、一日も早くお客様に顔を覚えていただけるよう努力します。」
ポイント
「お店のファンであること」を前面に出し、接客への憧れを素直に伝えます。
居酒屋・ダイニング × 未経験
例文
「貴店の活気あふれる雰囲気と、スタッフ同士のチームワークの良さに魅力を感じ、志望いたしました。
体力には自信があり、部活動では〇〇に打ち込んでいました。
忙しい時間帯でも笑顔を絶やさず、チームの一員としてテキパキと動けるよう、全力で取り組みます。」
ポイント
居酒屋では「元気」「体力」「協調性」が重視されます。
スポーツ経験などは良いアピールになります。
キッチン・調理補助 × 未経験
例文
「食べることが好きで、普段から自炊をしており、食に関わる仕事に挑戦したいと考えていました。
業務としての調理は未経験ですが、レシピ動画を見て新しい料理を作るなど探究心はあります。
前職の事務職で培った『正確に作業を進める力』を活かし、まずは仕込みや衛生管理などの基本から確実に習得していきたいです。」
ポイント
未経験でも「普段の自炊経験」や、異業種で培った「正確さ」をアピールすることで、信頼感を獲得できます。
学生(高校生・大学生)の場合
例文
「初めてのアルバイトになりますが、社会勉強として多くの人と関われる飲食店で働きたいと考えていました。
貴店は自宅から近く、学校帰りや土日のシフトにも入りやすいため、学業と両立しながら長く続けられると思い志望しました。
先輩方の指導を素直に聞き、早く戦力になれるよう頑張ります。」
ポイント
初めてのアルバイトならではの「素直さ」と「学ぶ意欲」、そして「シフトへの入りやすさ」を強調します。
主婦・主夫(パート復帰)の場合
例文
「子育てが一段落し、日中の空いた時間を有効活用したいと思い志望しました。
毎日家族のために料理を作ってきた経験を活かし、丁寧かつスピーディーな作業でキッチン業務に貢献できると考えています。
自宅が近く、急な欠員時などにも柔軟に対応できるかと思います。
ブランクはありますが、責任感を持って長く勤めさせていただきます。」
ポイント
家事スキルは立派な実務能力です。
また、主婦層の「長期勤務の安定感」は企業にとって大きな魅力です。
5.履歴書だけではない!面接と雇用契約の注意点【採用実務の視点】
熱意をアピールする方法
回避するために見るべきポイント
書類選考を通過したら、次は面接です。
ここでは、人事労務管理の観点から、面接時の重要ポイントと、トラブルを避けるための知識をお伝えします。
面接での「逆質問」で熱意をアピールする方法
面接の最後に「何か質問はありますか?」と聞かれた際、「特にありません」と答えるのは勿体ないです。
これは最後のアピールチャンスです。
おすすめの逆質問例
- 「一日も早く業務に慣れたいのですが、入社までに準備しておいた方が良いことはありますか?」(意欲のアピール)
- 「活躍されているスタッフの方々に共通する特徴はありますか?」(組織文化への理解)
これらの質問は、入社後の活躍を具体的にイメージしていることの証明になります。
ブラックバイトを回避するために見るべきポイント
せっかく入社しても、労働条件が悪ければ続きません。
面接は、企業が応募者を評価する場であると同時に、応募者自身が「安心して働ける企業か」をチェックする場でもあります。
入社前のチェックポイント
- 求人票の確認:「固定残業代」が含まれていないか、労働条件が曖昧でないかを確認しましょう。
- 店舗の雰囲気:面接時に、働いているスタッフの表情を見てください。楽しそうに働いているか、店長とスタッフの関係性は良好そうか、といった現場の空気感は、何より正直な情報です。

採用時には必ず「労働条件通知書」を書面(または希望すればメール等)で受け取る権利があります。
これを発行しない企業には注意が必要です。
6.未経験こそが大きな強み。自信を持って応募への一歩を
飲食業界は今、未経験者を強く求めています。
「経験がない」ということは、何色にも染まれる「柔軟性」があるということです 。
「家から近い」「食べて感動した」といった素直な動機は、伝え方一つで立派な志望動機になります。
本記事で紹介した例文やテクニックを参考に、自信を持って第一歩を踏み出してください。

