「飲食業界の志望動機、どう書けばいいか分からない……」
「アルバイト経験しかないけれど、正社員として通用するの?」
「『食べるのが好き』だけじゃ落ちると聞いて不安……」
実は、飲食業界の新卒採用では、多くの学生が「接客が好き」「美味しかったから」という個人的な感想だけで志望動機を書いてしまい、不採用になっています。
採用担当者が知りたいのは、応募者が「お客様」としてどう感じたかではなく、「ビジネスパーソン」としてどう利益に貢献できるかという点です。
この記事では、最新の市場データや採用トレンドに基づき、「食べるのが好き」から一歩進んだ、採用担当者の心を掴む志望動機の書き方を徹底解説します。
未経験者からバイトリーダー経験者、総合職志望まで、状況別の使える例文も掲載。
- 採用担当者が重視する「3つの評価軸」と視点の切り替え方
- 最新の市場データを用いた「説得力のある志望動機」の作り方
- 状況に合わせてそのまま使える「実践的な例文」と「NG例の修正法」
1.まずは現実を知ろう。飲食業界の「今」と「未来」
志望動機を書く前に、まずは敵(業界)を知ることが不可欠です。
「なんとなく楽しそう」というイメージだけでなく、数字に基づいた現実を知ることで、志望動機に説得力が生まれます。
1. 35兆円産業の底力とインバウンド需要
国内食市場の規模と外食市場のV字回復(2023年)
国内 食市場規模(全体)
外食市場規模(V字回復)
「飲食は斜陽産業」だと思っていませんか? それは間違いです。
農林水産省のデータによると、国内の食市場(食用農林水産物等)は約35.4兆円という巨大な経済圏を形成しています。
2023年の外食市場規模は前年比18.0%増の20兆円を超え、コロナ禍からのV字回復を見せています。
特に注目すべきは、インバウンド(訪日外国人)需要です。
円安を背景に外国人観光客による消費が増加しており、日本の外食産業は今や世界を惹きつける最強の「観光資源」となっています。この追い風は、これから業界を目指す人材にとって、大きな好機と言えます。
【志望動機への活かし方】
単に「美味しい」と言うだけでなく、「35兆円市場を支える食のインフラとして、世界に日本の食文化を発信したい」というマクロな視点を盛り込みましょう。
2. 「離職率29.1%」という真実と、企業が求める「覚悟」
飲食店の労働移動実態
全産業平均を大きく上回る28%超の流動性
(産業別:飲食店 の確定値を使用)
一方で、厳しい現実も直視しなければなりません。
厚生労働省の「令和5年雇用動向調査」によると、宿泊業・飲食サービス業の離職率は29.1%と、全産業の中でもトップクラスに高い水準です。
さらに、飲食店の倒産理由の多くが「人手不足」であるというデータもあります。
この数字から、企業の採用担当者は「早期離職のリスク」懸念していることは明らかです。
だからこそ、志望動機では「華やかなイメージ」だけでなく、「現場の厳しさ(立ち仕事、ピークタイムの圧力)」を理解しすることが重要です。

その上での「覚悟(レジリエンス)」を示すことが、最強の差別化になります。
【志望動機への活かし方】
「体力には自信があります」だけでなく、「部活動で培った粘り強さで、繁忙期のプレッシャーも乗り越えられます」といった、ストレス耐性をアピールするエピソードを加えましょう。
3. 求める人物像の変化:DXと食品ロス削減
昔の飲食業界は「元気で声が大きい人」が求められていましたが、今は違います。
人手不足を解消するために、モバイルオーダーや配膳ロボット、AIによる需要予測など、DX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進んでいます。
また、SDGsの観点から「食品ロス削減」への取り組みも企業の重要課題です。
これからの店長や幹部候補に求められるのは、以下のような能力です。
3つの能力
- 数値管理能力
- ITリテラシー
- サステナビリティ視点
これからのリーダーには、売上データに基づき論理的な戦略を立てる「数値管理能力」が不可欠です。
また、新しいシステムを柔軟に使いこなし、業務効率化を提案できる「ITリテラシー」も求められます。
さらに、徹底した在庫管理によってロスを減らし、確実な利益を生み出す「サステナビリティ視点」も重要な要素となります。
2.採用担当者がESでチェックしている「3つの評価軸」
何千通ものエントリーシート(ES)を見る採用担当者は、どこを見ているのでしょうか? 現場の声や調査データから、共通する「3つの評価軸」が見えてきました。
すぐに辞めないか?
相手の気持ちを察せるか?
利益を生めるか?
1. 継続性 (Continuity) :すぐに辞めないか?
前述の通り、早期離職は企業にとって最大のリスクです。
「嫌なことがあったらすぐ逃げるタイプではないか?」を厳しくチェックされます。

アルバイトを3年間続けた、部活を引退までやり遂げたなど、「一つのことを継続した実績」を必ず盛り込むことが重要です!
2. 対人感受性 (Hospitality) :相手の気持ちを察せるか?
マニュアル通りの対応ならロボットで十分です。
予測不能な事態や、お客様の隠れたニーズに気づける「察する力」が求められます。

「お客様に言われる前にお冷を出した」「困っているスタッフに声をかけた」といった具体的なエピソードで、観察眼をアピールすることが大切です!
3. ビジネス感覚 (Business Sense) :利益を生めるか?
これが学生に最も不足している視点です。
店長候補として採用する以上、ゆくゆくは「スタッフ・商品・売上」を管理する経営者としての視点が求められます。

「売上目標を達成するために何をしたか」「廃棄ロスをどう減らしたか」など、数字を意識した行動を記述ことが重要です!
3.誰でも書ける!「受かる」志望動機の作成フレームワーク
文章力に自信がなくても大丈夫。
以下の4ステップに沿って要素を埋めていけば、論理的で説得力のある志望動機が完成します。これを「過去・現在・未来」の一貫性モデルと呼びます。
棚卸し
(強みタグ)
差別化
ビジョン
STEP 1:きっかけ(原体験)の棚卸し【過去】
なぜ飲食業界なのか? なぜその会社なのか? 根本にある体験を思い出します。
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「そのお店で一番感動した瞬間は?」「他のお店と何が違った?」
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「味が良かった」「店員さんの笑顔に救われた」「空間が居心地よかった」など。
「美味しかった」を因数分解するとは、飲食店での感動を単に「味が良かった」という一言で片付けないことです。
その満足感が「料理の味」によるものか、「店員さんの温かい接客」によるものか、あるいは「居心地の良い空間」によるものかを、具体的な要素に細かく分解します。
つまり、自身が何に対して価値を感じたのかを論理的に分析し、言葉にすることを指します。
STEP 2:能力の証明(強みタグ)【現在】
その体験を実現するために、あなたには何ができるのか?
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「学生時代、一番頑張ったことは?(ガクチカ)」
「そこで得た力は飲食でどう活きる?」
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「体力お化け」「チームの潤滑油」「データ分析オタク」など。
「自分の強みにタグをつける」とは、自身の強みに短いキャッチコピーをつけて、面接官の記憶に残すテクニックのことです。
単に「粘り強い」などの一般的な言葉を使うのではなく、「体力お化け」や「チームの潤滑油」のように、あえてユニークな比喩を用いて強みを表現します。
こうすることで面接官の興味を惹きつけ、その他大勢の学生に埋もれてしまうのを防げます。結果として、相手の記憶に強く残る自己PRが可能になります。
STEP 3:企業研究と差別化(Why This Company?)
業界の追い風(マクロ)と、その企業の独自性(ミクロ)を掛け合わせます。
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「競合他社ではなく、なぜこの会社?」
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「御社の〇〇という理念に共感し」だけでなく、「御社のDX推進による効率化への取り組みは、今後の人手不足解消の鍵になると確信しております」など。
「競合他社ではなく、なぜこの会社なのか」という問いには、単なる理念への共感だけでは不十分です。
たとえば「御社のDX推進などの取り組みが、将来の課題解決の鍵になる」といった具体的な話をする必要があります。
このように、精神論だけでなく、ビジネス視点に基づいた根拠を語ることが重要です。
STEP 4:キャリアビジョン(貢献)【未来】
入社後、どうなりたいか?
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「3年後、5年後の自分は?」「店長になって何を実現したい?」
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「地域に愛される店舗を作る」
「エリアマネージャーとして経営に関わる」など。
「3年後、5年後の自分」を問われた際、単に「店長になりたい」と答えるだけでは不十分です。
店長になること自体をゴールにするのではなく、その先を語ることが大切です。
たとえば、「地域に愛される店舗を作る」や「エリアマネージャーとして経営に関わる」といった、具体的なビジョンを示すことが大切です。
4.【状況別】飲食業への志望動機例文集と解説

ここからは、具体的な例文を紹介します。自分の状況に近いものを参考に、アレンジして使ってください。
ケースA:飲食アルバイト経験者(ホールリーダーなど)
即戦力として最も期待される層です。「慣れ」ではなく「マネジメント経験」をアピールします。
私は、食を通じて人々の日常に「彩り」と「活力」を提供したいと考え、貴社を志望します。大学3年間、カフェのホールスタッフとして勤務し、時間帯責任者を務めました。
当初、ピーク時に提供遅れが多発するという課題がありましたが、私はスタッフの配置を見直し、ドリンク作成と提供の動線を短縮する提案を行いました。その結果、回転率が向上し、昨対比で売上を110%伸ばすことに貢献しました。
貴社は「現場力」を重視し、若手にも積極的に店舗運営を任せる風土があると伺っております。私の強みである「課題発見力」と「現場改善力」を活かし、早期に店長として店舗の利益最大化に貢献したいと考えています。
解説
Good: 「回転率向上」「売上110%」といった具体的な成果(数字)があり、ビジネス感覚があることを証明できています。
Point: アルバイト経験者は「作業ができること」をアピールしがちですが、重要なのは「組織をどう動かしたか」です。
ケースB:未経験・異業種アルバイト(アパレルなど)
飲食経験がなくても、「接客の質」や「他業種の知見」は強力な武器になります。
貴社の「一杯のコーヒーで、お客様の一日を変える」という理念に深く共感し、志望いたしました。私はアパレル販売員のアルバイトを通じ、お客様の潜在的なニーズを汲み取る「提案力」を磨いてきました。
顧客単価を上げるため、単に商品を売るのではなく、お客様のライフスタイルに合わせたコーディネート提案を徹底した結果、店舗内での個人売上1位を達成しました。
飲食業界は未経験ですが、この「提案力」は、貴社のカフェ事業におけるセットメニューの提案や、顧客満足度の向上に必ず活かせると確信しております。一からオペレーションを学び、将来的にはSVとしてブランド価値の向上に携わりたいです。
解説
Good: アパレルで培った「提案力(単価アップ)」を飲食のビジネスに転用(トランスファー)できています。
Point: 未経験のハンデを「新しい視点」というメリットに変えることが重要です。
ケースC:体育会系・部活動経験者(体力・精神力)
離職率の高い飲食業界において、「辞めない」という信頼感は最強のカードです。
「食」を通じて、明日への活力を生み出す空間を作りたいと考え、志望します。私は高校・大学とラグビー部に所属し、厳しい練習の中で「継続力」と「チームワーク」を培ってきました。
飲食業界は、立ち仕事や繁忙期の対応など、体力・精神力共にタフさが求められる環境だと認識しております。しかし、私は部活動で培った粘り強さで、どんな困難な状況でも笑顔を絶やさず、チームを鼓舞し続ける自信があります。
貴社の店舗展開スピードの速さに惹かれており、私も体力とガッツを武器に、誰よりも早く店長昇格を目指し、貴社の成長エンジンとなりたいです。
解説
Good: 業界の厳しさ(離職率の高さなど)を暗に理解した上で、「それでもやれる」という覚悟を示しています。
Point: 「体力がある」だけでなく、それを「チームのためにどう使うか」まで言及するのがコツです。
ケースD:総合職・幹部候補志望(マクロ視点)
現場だけでなく、将来の経営幹部を目指すなら、業界全体の動向を踏まえた視点が必要です。
日本の食文化を世界へ発信するインフラ構築に携わりたいと考え、貴社を志望します。現在、日本の外食産業は35兆円規模に達し、インバウンド需要の増加により、世界的な観光資源としての価値が高まっています。
その中で貴社は、いち早く海外展開を進めると同時に、国内店舗でのDX化による生産性向上に注力されています。私は大学で経営学を専攻し、組織マネジメントについて学んでまいりました。
まずは現場でお客様の声を徹底的に学び、将来的にはDX推進や海外事業部において、貴社のグローバルブランド確立に貢献したいと考えています。
解説
Good: 市場規模やインバウンド、DXといったマクロなトレンドを押さえ、経営視点を持っていることをアピールできています。
Point: 「現場を知らない頭でっかち」と思われないよう、「まずは現場で学ぶ」という謙虚さを忘れないようにしましょう。
5.絶対NG! 面接官が落とす「残念な志望動機」
せっかくの熱意も、伝え方を間違えると逆効果になります。よくあるNG例と、その修正法を紹介します。
好きだから
給料が良い
学ばせてほしい
NG 1:「食べることが好きだから」
- 理由: それは「消費者」の視点です。会社は「提供者(プロ)」を求めています。
- 修正法: 「好き」を原動力に、「他者にもその感動を提供したい」「食を通じて社会課題を解決したい」という提供者視点に変換しましょう。
理由:それは「消費者」の視点です
受け身の姿勢
ただ「食べる」「楽しむ」だけ。
自分本位な考え方。
しかし、会社は
「提供者(プロ)」を求めています。
修正法:提供者視点に変換しましょう
能動的に価値を生み出す視点へ。
「食べることが好き」という、単なる消費者の感想で終わらせるのではなく、その「好き」を原動力に変えましょう。
そして、「他者に感動を与えたい」「社会課題を解決したい」という価値を生み出す意識を持ってください。
あくまで「プロ(提供者)」の視点で、志望動機を語ることが重要です。
NG 2:「家から近い/給料が良い/福利厚生が良い」
条件重視の志望動機:面接官の本音と対策
「もっと良い条件なら
辞めるよね?」
条件だけで選ぶと、
早期離職を警戒される
「長く腰を据えて
働ける環境」
本音は隠し、
キャリア形成への意欲に変換
「条件重視=短期離職」と警戒されるのを避けるため、本音は隠し、「長く腰を据えてキャリア形成ができる環境」という長期的な視点に変換して伝えましょう。
NG 3:「接客スキルを学ばせてほしい」
会社は学校ではない
受け身の姿勢
自ら学び、成長し
会社に貢献する
会社は学校ではないため、「教えてもらう」という受け身の姿勢ではなく、自ら学び成長して会社に貢献する「ギバー」としてのスタンスをアピールしましょう。
6.面接で聞かれる「深掘り質問」対策
ESが通っても、面接で突っ込まれて答えられなければ意味がありません。以下の「キラー質問」への回答を用意しておきましょう。
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「それ、うちじゃなくても良くない?(競合他社との違い)」
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企業ごとの「主力商品」「出店戦略(駅前か郊外か)」「社風(トップダウンかボトムアップか)」の違いを明確に伝える。
「それ、うちじゃなくても良くない?」という鋭い質問に対抗するためには、単なるイメージではなく、企業ごとの具体的な違いを明確にしておく必要があります。
たとえば、その会社の「主力商品」が何であるか、出店場所は「駅前」なのか「郊外」なのかといった「戦略の違い」を伝えます。
さらには「トップダウン」か「ボトムアップ」かといった「社風の違い」まで深く理解し、その会社でなければならない理由を論理的に語れるように準備しておきましょう。
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「飲食はキツイけど、本当に大丈夫?」
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「はい、理解しています」と即答し、過去の困難を乗り越えたエピソード(部活やバイト)を提示して、ストレス耐性を証明する。
「飲食はキツイけど大丈夫?」と聞かれたら、まずは迷わず「はい、理解しています」と即答します。ただ、言葉だけでは説得力が足りません。
そこで、部活やアルバイトなど、過去の困難を乗り越えたエピソードを添えて、環境でも折れない「ストレス耐性」があることを、事実として証明しましょう。
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「あなたを採用すると、どんなメリットがある?」
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自分の強み(英語力、体力、分析力など)、具体的にどう店の利益になるか。
「あなたを採用すると、どんなメリットがある?」と問われた際は、単に「英語が話せます」や「体力があります」と強みを羅列するだけでは不十分です。
その強みが、具体的にお店の利益にどう直結するのかを語りましょう。
つまり、「私を採用すれば、こういう理由で売上が伸びます」というビジネスの視点で答えることが重要です。
7.あなたの「熱意」を「論理」で武装しよう
飲食業界は今、大きな変革期を迎えています。単なる「労働力」ではなく、新しい技術や視点を取り入れ、日本の食文化をアップデートできる「新しい人材」が求められています。
「食が好き」「人が好き」という純粋な想いは、大切な原動力になります。あとは、それを採用担当者に伝わる「ビジネスの言葉」に変換するだけです。
この記事で紹介したフレームワークや例文を参考に、独自の「勝てる志望動機」の構築に、本記事のフレームワークが役立つはずです。

