飲食業界は現在、求人数が豊富で就職しやすい「売り手市場」の傾向にあります。
しかし、月給30万円を超えるような好待遇の求人や、完全週休2日制を導入している優良企業の正社員枠は、依然として競争率が高いのが現実です。
「料理が好き」「接客が好き」という気持ちだけで採用される時代は終わりつつあります。
採用担当者は、よりシビアに「長く活躍してくれる人材か」を見極めようとしています。
本記事では、キャリアコンサルティングの現場で使用される志望動機の書き方を解説します。
また、多くの人が悩む「給料への不満」や「人間関係のトラブル」といったネガティブな退職理由を、プラスの評価に変える視点の転換(リフレーミング)についても、具体的な例文とともに紹介します。
- 採用担当者が志望動機でチェックしている「3つの評価ポイント」
- 論理的で説得力のある文章が書ける「PREP+V法」の具体的な使い方
- 「給料」や「人間関係」などの本音をポジティブな動機に変換するテクニック
1.飲食業界の正社員採用で「評価される志望動機」の3つの共通点
「評価される志望動機」の3つの共通点
(早期離職リスクの払拭)
ポータブルスキル
(経験の再現性と応用力)
一貫性
(将来の管理者候補としての資質)
魅力的な志望動機を作成するためには、まず「相手(企業側)」が何を求めているかを知る必要があります。
飲食企業の採用担当者は、主に以下の3つの視点で応募書類を読み解いています。
1. 定着性:すぐに辞めずに長く働けるか
飲食業界は離職率が高い傾向にあるため、採用担当者は「採用してもすぐに辞めてしまうのではないか」という懸念を常に抱いています。
そのため、「なぜこの店でなければならないのか」という理由が曖昧だと、早期離職のリスクがあると判断されかねません。

企業理念への共感や、その店独自の魅力(商品、接客スタイルなど)を具体的に挙げることが、定着性のアピールに繋がります。
2. 貢献意欲とポータブルスキル:どう活躍してくれるか
「勉強させてほしい」という受け身の姿勢ではなく、「自分がどう店に貢献できるか」を示すことが重要です。

未経験者の場合、調理や接客の技術がなくても、異業種で培った「コミュニケーション能力」や「段取り力」などの持ち運び可能なスキル(ポータブルスキル)は、飲食業界でも高く評価されます。
3. 論理的思考力と一貫性
履歴書や職務経歴書の内容と、志望動機に矛盾がないかもチェックされます。
話の筋が通っていることは、将来的に店長やマネージャーとして店舗運営(数値管理やスタッフ指導)を任せられるかどうかの判断材料にもなります。
2.誰でも論理的に書ける!実践的フレームワーク「PREP+V法」
想いを伝えるためには、型(フレームワーク)を使うのが効果的です。
ビジネス文書作成で推奨される「PREP法」に、将来の展望(Vision)を加えた「PREP+V法」を使うことで、説得力のある志望動機が完成します。
3.【職種・状況別】そのまま使える志望動機例文と解説
そのまま使える志望動機例文と解説
ホールスタッフを目指す
やる気を「スタンス」として言語化。
マネージャーを目指す
即戦力としての貢献意欲を提示。
から転職する場合
他業界の強みを武器に変える。
ここでは「PREP+V法」を活用した具体的な例文を紹介します。
ご自身の状況に合わせて調整して活用してください。
1. 未経験からホールスタッフを目指す場合
未経験者の場合、技術的なスキルよりも「スタンス(仕事への姿勢)」と「ポータブルスキル」が重視されます。
笑顔や気配りといったヒューマンスキルをアピールしましょう。
【例文】
私は、貴店の「お客様にとっての第二の食卓」というコンセプトに深く共感し、正社員として働くことを志望いたします。(Point)
以前友人と利用した際、忙しい中でも笑顔を絶やさないスタッフの方々の対応に、非常に居心地の良さを感じたからです。(Reason)
前職ではコールセンター業務に従事しており、声だけでお客様の感情を汲み取る傾聴力を磨いてまいりました。この「相手の立場に立つ」スキルは、貴店の接客でも活かせると考えています。(Episode)
そのため、貴社で働くことを強く志望します。(Point)
入社後は、お客様一人ひとりに合わせたおもてなしを実践し、また来たいと思っていただけるファン作りを通して、店舗の売上に貢献したいです。(Vision)
2. 経験者が店長・マネージャーを目指す場合
経験者の採用では、「何ができるか(Can)」に加え、「具体的な成果(Result)」と「再現性」が問われます。
具体的な数値を用いた実績アピールが有効です。
【例文】
貴社の展開する「地産地消」へのこだわりに共感し、その魅力を広める役割を担いたいと考え志望いたしました。(Point)
私はこれまでイタリアンレストランで5年間、調理とホールを兼務してきました。(Reason)
特に副店長として原価管理に注力し、廃棄ロスの削減に取り組んだ結果、FLコストを2%改善させた実績があります。(Episode)
この経験を活かし、貴社に貢献したいと考えております。(Point)
入社後は、質の高いサービスと利益確保を両立できる店長として店舗を牽引し、地域一番店を目指して尽力いたします。(Vision)
3. 異業種(営業・事務など)から転職する場合
異業種からの転職者は、飲食業界にはない客観的な視点やビジネススキルが武器になります。
数値を意識した行動や、業務効率化のスキルは高く評価されます。
【例文】
成長著しい貴社の新規出店事業に携わりたいと考え、志望いたしました。(Point)
食べることが好きで、食を通じて人々に活力を与える仕事に以前から憧れを持っておりました。(Reason)
前職の営業事務では、複数の案件を同時に進行するマルチタスク能力と、正確な事務処理能力を身につけました。この段取り力は、ピークタイムのキッチンオペレーションや発注業務においても活かせると確信しています。(Episode)
貴社の成長を現場から支える人材になりたいと考えています。(Point)
将来的には、現場で培った知見と事務スキルを融合させ、本部機能の強化やオペレーション構築にも貢献したいという展望を持っています。(Vision)
4.「給料が安い」「人間関係が辛い」…ネガティブな退職理由の変換術
転職のきっかけが「給与への不満」や「職場の人間関係」であることは珍しくありません。
しかし、伝え方を誤ると「不平不満が多い人」「他責思考の人」と判断されるリスクがあります。

心理学的な「リフレーミング(枠組みの転換)」の技術を使い、ネガティブな理由をポジティブな「未来への意欲」に変換して伝えましょう。
| 本音(ネガティブな理由) | 採用担当者の懸念 | ポジティブ変換(リフレーミング) |
|---|---|---|
| 給料が安くて生活が苦しい | 金銭への執着、待遇への不満分子 | 「成果が正当に評価される環境で実力を試したい。売上に貢献し、それに見合った評価を得てキャリアアップしたい」(成果主義への意欲) |
| 店長や同僚と合わなかった | 協調性の欠如、トラブルメーカー | 「チームワークを大切にする環境で働きたい。スタッフ全員が同じ方向を向き、連携して最高のサービスを提供したい」(組織貢献への意欲) |
| 残業が多くて休みがない | ストレス耐性の低さ、権利主張が強い | 「限られた時間の中で最大のパフォーマンスを発揮したい。生産性を意識し、効率的な店舗運営に貢献したい」(生産性向上への意欲) |
| なんとなく今の店に飽きた | 飽きっぽい、覚悟不足 | 「より高いレベルの調理技術や接客を学びたい。プロフェッショナルとして成長できる環境で、食の可能性を追求したい」(成長意欲) |
5.「どこでもいい」と思われないための企業研究と店舗リサーチ
企業研究と店舗リサーチ
代表メッセージの確認
(覆面調査)のすすめ
「なぜうちの店なのか?」という質問に答えるためには、事前のリサーチが不可欠です。
インターネットでの情報収集に加え、実際に店舗に足を運ぶことで、志望動機の説得力は格段に増します。
1. 経営理念と代表メッセージの確認
企業のホームページで「企業理念(ビジョン)」や「代表挨拶」を確認しましょう。
「食で世界を笑顔に」といったホスピタリティ重視なのか、「圧倒的成長」といった拡大志向なのかによって、アピールすべきポイントが変わります。
2. 実店舗偵察(覆面調査)のすすめ
応募前に客として店舗を利用し、以下のポイントを観察してみてください。
これらを「Reason(理由)」に盛り込むことで、他の応募者と差別化できます。
スタッフの表情と連携
忙しい時でも笑顔があるか、声掛けはスムーズか。
清掃状況
トイレやテーブル、床は清潔か(QSCのレベル)。
独自の工夫
手書きのPOPや季節のメニューなど、店ごとのこだわり。
6.履歴書・職務経歴書への落とし込みと面接対策
落とし込みと面接対策
役割の違い
準備する
志望動機が固まったら、それを応募書類と面接で効果的に伝える準備を行います。
履歴書と職務経歴書の役割の違い
履歴書は「事実(経歴)」を伝える公的な書類であり、職務経歴書は「価値(スキル)」をアピールするプレゼン資料です。
志望動機欄は履歴書にもありますが、職務経歴書の「自己PR」や「職務要約」で、より具体的にExperience(経験)とVision(展望)を補足すると効果的です。
面接での「逆質問」を準備する
面接の最後にある「何か質問はありますか?」という逆質問は、最後のアピールチャンスです。
「特にありません」と答えるのは避けましょう。
調べればわかることではなく、意欲が伝わる質問を用意しておくのが戦略的です。
逆質問の例
- 「御社で活躍されている店長の方々に、共通する資質や行動特性はありますか?」(企業文化への理解意欲)
- 「入社までに準備しておくべきことや、勉強しておくべきスキルはありますか?」(学習意欲)
7.志望動機は「未来への約束」。自信を持って一歩を踏み出そう
今回解説した「PREP+V法」や「リフレーミング技術」を活用すれば、文章を書くことに苦手意識がある方でも、採用担当者の心に響く志望動機を作成できます。
志望動機を考える時間は、単なる応募書類の作成作業ではありません。
「自分は飲食業界でどうなりたいのか」というキャリアビジョンを明確にする、大切なプロセスでもあります。
飲食業界は今、意欲ある人材を求めています。過去の経験や自分の想いを、論理的な言葉(ロジック)と情熱(パッション)に乗せて伝えれば、評価される確率は格段に高まります。
まずは、気になったお店に足を運び、肌で雰囲気を感じることから始めることを推奨します。
納得できる労働条件と環境を選び、着実に新しいキャリアの一歩を踏み出してください。

