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飲食店正社員の仕事内容と年収の実態|きつい理由と将来性を解説

飲食店正社員の日々の業務には接客や調理が含まれますが、正社員に求められる本質的な役割は「店舗という一つの経営体を動かすプロフェッショナル」としての働きです。

ヒト(スタッフ)・モノ(食材)・カネ(売上・利益)を管理し、利益を生み出す仕組みを作ることは、まさにビジネスの縮図とも言えます。

しかし一方で、「きつい」「やめとけ」といった厳しい声が聞かれるのも事実です。

長時間労働や不規則なシフトなど、労働環境面の課題もゼロではありません。

本記事では、キャリア理論に基づく視点と、人事労務管理の実務的な観点を交え、飲食店正社員の「本当の仕事内容」と「業界のリアル」を、客観的なデータに基づいて解き明かしていきます。

不安を解消し、納得のいくキャリア選択を行うための判断材料として提示します。

この記事を読んでわかること

この記事を読んでわかること
  • ホール・キッチンだけではない、正社員特有の「経営・マネジメント業務」の詳細
  • 「きつい」と言われる理由の背景と、最新データで見る給与・休日数の実態
  • 求人票や面接で「ホワイト企業」を見極めるための具体的なチェックポイント

1.飲食店正社員の基本的な3つの業務領域

飲食店正社員の
基本的な3つの業務領域
ホール・接客
(サービス)
顧客体験の
マネジメント
キッチン・調理
(プロダクト)
品質と利益の
管理
店舗運営・管理
(経営)
ヒト・モノ・カネの
管理

飲食店の正社員の仕事は、大きく分けて「ホール・接客」「キッチン・調理」、そして正社員ならではの「店舗運営・マネジメント」の3つに分類されます。

アルバイトと同じ作業をしていても、そこに求められる責任と視点は大きく異なります。

ホール・接客(サービス):顧客体験のマネジメント

正社員のホール業務は、単なるオーダー取りや配膳ではありません。

店全体の状況を把握し、お客様に快適な時間を過ごしていただくための「空間のコントロール」が求められます。

例えば、グラスが空いているお客様に気づく視野の広さや、アレルギーをお持ちの方への的確な対応、そして万が一クレームが発生した場合の最終的な対応などは、正社員の重要な役割です。

お客様の満足度を高め、リピーターを獲得することは、店舗の売上に直結する重要なマーケティング活動と言えます。

キッチン・調理(プロダクト):品質と利益の管理

「美味しい料理を作る」ことに加え、正社員には「食の安全」と「利益」を守る責任があります。

特に重要視されているのが、HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理です。

食材の温度管理や調理器具の消毒などを徹底し、食中毒のリスクを防ぐことは、店舗の存続に関わる重大な業務です。

また、食材の廃棄(ロス)を減らしながら、原価率を適正に保つための発注・在庫管理も、利益を生み出すために欠かせないスキルです。

店舗運営・マネジメント(経営):ヒト・モノ・カネの管理

これが、アルバイト業務と最も大きく異なる点です。

正社員、特に店長候補となると、以下のような「経営者視点」での業務が発生します。

売上・利益管理(PL管理)

売上目標の達成に向けた進捗管理や、人件費・食材費(FLコスト)の調整。

人材マネジメント

アルバイトの採用面接、教育、シフト作成、モチベーション管理。

労務管理

労働基準法に基づいたスタッフの労働時間管理や休憩の取得状況のチェック。

20代のうちから、これほどダイレクトに経営資源(ヒト・モノ・カネ)を動かす経験ができる職種は、他業界を見渡してもそう多くはありません。

2.【業態別】仕事内容と求められるスキルの違い

【業態別】仕事内容と求められるスキルの違い
ファーストフード・
チェーン店
居酒屋・
ダイニングバー
専門料理店
(イタリアン・和食・寿司など)
中食・
デリバリー専門店

一口に「飲食店」と言っても、その業態によって仕事内容や求められるスキルは異なります。

自分の性格や強みに合った業態を選ぶことが、ミスマッチを防ぐ第一歩です。

ファーストフード・チェーン店

マニュアル化されたオペレーションを、スピーディーかつ正確に実行することが求められます。

大規模な店舗が多く、多数のアルバイトスタッフをまとめ上げるリーダーシップや管理能力が重視されます。

教育制度が整っていることが多いため、未経験からマネジメントを学びたい方に適しています。

居酒屋・ダイニングバー

活気ある接客と、臨機応変な対応力が求められます。

お客様との距離が近く、コミュニケーション能力が活かせる場面が多いのが特徴です。

また、お酒に関する知識や、深夜営業に対応できる体力も必要となる場合があります。

専門料理店(イタリアン・和食・寿司など)

特定のジャンルに特化しており、高度な調理技術や深い食材知識が求められます。

「職人」としての側面が強く、技術を習得するための修行期間が必要な場合もあります。

将来的に独立して自分の店を持ちたいという明確な目標がある方に向いています。

中食・デリバリー専門店

テイクアウトや宅配を専門とする業態です。

接客業務が少なく、調理や梱包、配送ルートの管理などが主な業務となります。

デジタルツール(デリバリーアプリの端末など)の操作に慣れていることや、効率的に作業を進める能力が求められます。

3.「飲食店の正社員はやめとけ」と言われる5つの理由と実態

「飲食店の正社員はやめとけ」
と言われる5つの理由と実態
拘束時間の長さと
不規則なシフト
立ち仕事による
肉体的負担
「給料が安い」は
本当か?
人間関係と
クレームのストレス
人手不足による
業務過多

インターネット検索などで「飲食 正社員」と調べると、「やめとけ」「きつい」といったネガティブな言葉を目にすることがあります。

なぜそう言われるのか、その理由と実態について、客観的な視点から解説します。

拘束時間の長さと不規則なシフト

飲食店は営業時間が長く、土日祝日も営業していることが一般的です。

そのため、労働時間が長くなったり、シフト制によって生活リズムが不規則になったりしがちです。

労働基準法の観点からは、「変形労働時間制」を採用している企業が多くあります。

これは、一定期間内での週平均労働時間を法定労働時間内に収めることを条件に、繫忙期の労働時間を長く、閑散期を短く調整する制度ですが、適正に運用されていない場合、恒常的な長時間労働につながるリスクがあります。

立ち仕事による肉体的負担

勤務中は基本的に立ちっぱなしで、重い料理を運んだり、厨房内を動き回ったりするため、体力的な負担は小さくありません。

足のむくみや腰痛は、多くの飲食従事者が経験する悩みの一つです。

適切な靴選びや、日々のケアが重要となります。

「給料が安い」は本当か?

「飲食は稼げない」というイメージがあるかもしれませんが、データを見ると変化が起きています。

厚生労働省の調査によると、近年の人手不足を背景に飲食業界の賃金は上昇傾向にあります。

初任給こそ他業界と変わらない水準でも、店長やエリアマネージャーに昇進することで、大幅に給与がアップするケースも珍しくありません。

実力主義の企業が多く、成果を出せば年齢に関係なく収入を上げられるチャンスがあります。

参考|厚生労働省:賃金構造基本統計調査

人間関係とクレームのストレス

狭い店舗内で長時間一緒に働くため、スタッフ間の人間関係がこじれるとストレスの原因になります。

また、理不尽なクレームに対応しなければならない場面もあり、精神的なタフさが求められる側面は否定できません。

人手不足による業務過多

ギリギリの人員で店舗を回している場合、一人が休むと他のスタッフに大きな負担がかかる構造的な問題があります。

しかし最近では、配膳ロボットやモバイルオーダーシステムの導入など、DX(デジタルトランスフォーメーション)によって業務効率化を進め、負担を減らす企業も増えてきています。

4.データで見る飲食業界の「今」と将来性

データで見る飲食業界の
「今」と将来性
外食市場の
回復とトレンド
働き方改革と
待遇改善の動き

厳しい側面もある飲食業界ですが、市場全体としては回復と成長の兆しが見えています。

外食市場の回復とトレンド

日本フードサービス協会のデータによると、外食市場の売上はコロナ禍を経て回復傾向にあります。

特に、インバウンド(訪日外国人)需要の増加や、付加価値の高いメニューへの単価アップが市場を牽引しています。

「安ければ良い」という時代から、「価値ある食体験」が求められる時代へと変化しており、質の高いサービスを提供できる人材の価値は高まっています。

参考|日本フードサービス協会:統計データ

働き方改革と待遇改善の動き

深刻な人手不足は、逆に言えば「求職者が企業を選べる」状況を生み出しています。

人材確保のため、完全週休2日制の導入や、年間休日数の増加、賞与の支給など、労働環境の改善に本気で取り組む企業が増えています。

同一労働同一賃金の流れもあり、正社員の待遇は以前よりも確実に向上しています。

5.飲食業界で描けるキャリアパスと「やりがい」

飲食業界で描ける
キャリアパスと「やりがい」
早期に身につく
「経営者視点」
多様な
キャリア展開
独立・開業への
最短ルート

大変な面がある一方で、飲食店の正社員だからこそ得られるスキルやキャリアの可能性も豊富にあります。

早期に身につく「経営者視点」

前述の通り、店長業務を通じて「ヒト・モノ・カネ」の管理スキルを20代のうちから実践的に学べるのは大きなメリットです。

このマネジメント経験は、将来どのような業界に進んだとしても通用する、市場価値の高い「ポータブルスキル」となります。

多様なキャリア展開

現場での経験を積んだ後は、以下のように多様なキャリアパスが描けます。

スーパーバイザー(SV)・エリアマネージャー

複数の店舗を統括し、経営指導を行う。

本部スタッフ

商品開発、マーケティング、店舗開発、人事など。

独立開業

自分の店を持つ。

独立・開業への最短ルート

将来自分のお店を持ちたいと考えている人にとって、給料をもらいながら店舗運営のノウハウ、調理技術、仕入れルート、接客スキルを学べる環境は、最高の修業の場と言えます。

独立支援制度を設けている企業もあり、夢への最短ルートになり得ます。

6.ブラック企業を避け、ホワイトな飲食店を見極めるポイント【法務・労務視点】

法務・労務視点
ブラック企業を避け、
ホワイトな飲食店を見極めるポイント
Point 1
求人票の
チェックポイント
Point 2
面接での
確認事項
Point 3
実際の
店舗偵察

後悔しない転職のためには、企業選びが最も重要です。

法務・労務の視点から、チェックすべきポイントをお伝えします。

求人票のチェックポイント

求人票を見る際は、給与額だけでなく、その内訳や労働条件を細かく確認しましょう。

固定残業代(みなし残業代)

「月給〇〇万円(固定残業代45時間分を含む)」といった記載がある場合、その時間を超えないと追加の残業代が出ない仕組みです。

基本給の金額を確認することが重要です。

年間休日数

飲食業界は少なめな傾向がありますが、目安として「105日以上」(週休2日ペース)ある企業を選ぶと、プライベートの時間も確保しやすくなります。

社会保険の完備

雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金が完備されていることは、正社員として働く上での最低条件です。

面接での確認事項

面接は、企業が応募者を評価する場であると同時に、応募者が企業を評価する場でもあります。

「離職率はどのくらいですか?」と直接聞きにくい場合は、「長く活躍されている社員の方は、どのようなキャリアを歩まれていますか?」や「有給休暇は皆さんどのように消化されていますか?」といった聞き方で、定着率や休みやすさを探るのが有効です。

実際の店舗偵察

可能であれば、応募予定の企業の店舗を顧客として実際に利用してみる手法が有効です。

スタッフの表情は明るいか、店内の清掃は行き届いているか、店長とスタッフのコミュニケーションは良好か。

現場の雰囲気は、企業の体質を嘘偽りなく映し出します。

7.よくある質問(FAQ)

未経験でも飲食店の正社員になれますか?

はい、十分に可能です。

飲食業界は未経験者を歓迎する求人が多く、入社後の研修制度が整っている企業も多数あります。

前職でのコミュニケーション経験や、体力、意欲などが評価されます。

年齢制限はありますか?

明確な制限はありませんが、立ち仕事で体力が必要なため、20代~30代が採用の中心となる傾向はあります。

しかし、マネジメント経験や調理技術があれば、40代以上でも活躍の場は広がっています。

休みは本当に取れますか?

企業によりますが、近年は「完全週休2日制」を導入する企業が増えています。

ただし、土日祝日に休めるとは限らないため、求人票の休日規定やシフトの組み方を確認することが大切です。

ボーナス(賞与)は出ますか?

企業の業績や規模によります。

大手チェーン店などでは年2回の賞与が制度化されているところが多いですが、個人店などでは業績連動型の決算賞与のみの場合もあります。

求人票の「賞与」欄における前年度実績の記載などを確認することが望ましいです。

8.飲食店の仕事は「食」を通じて人を幸せにするプロフェッショナル

飲食店の正社員は、決して「楽な仕事」ではありません。

体力も精神力も必要とされ、時には厳しい局面に立たされることもあるでしょう。

しかし、目の前のお客様から「美味しかった」「ありがとう」という言葉を直接いただける喜びや、チームで目標を達成した時の一体感、そして店舗経営というビジネススキルが身につく経験は、他の仕事では得難い大きなやりがいです。

大切なのは、イメージだけで判断せず、仕事内容の実態や労働条件を正しく理解し、自身のキャリアプランに合致した、適正な労働環境を選ぶことが重要です。

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