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飲食正社員の勤務時間は長い?統計の嘘とホワイト店の選び方

「飲食業界=ブラック、長時間労働」というイメージは根強く、実際に現場で疲弊している方の声も少なくありません。

しかし、公的な統計データを見ると、飲食業界の労働時間は他業種と比べても「短い」という意外な数字が出ています。

この数字と、現場の肌感覚のズレはどこから来るのでしょうか。

本記事では、労働関連法規の原則と飲食業界の現場実態に基づき、統計データの裏側にある「実態」と、知っておくべき「法律のルール」、そして実際に働き方改革に成功している「ホワイトな飲食店」の見極め方を解説します。

感情論ではなく、正しい知識を武器に、持続可能なキャリアを選び取るための手引きとしてお役立てください。

この記事を読んでわかること
  • 統計上の「平均労働時間」と正社員の「実態」にある大きな乖離の理由
  • 小規模飲食店に適用される「週44時間特例」や「変形労働時間制」の仕組み
  • 求人票や面接で「ホワイトな飲食店」を見抜くための具体的なチェックポイント

1.飲食業界の労働時間は本当に長い?データで見る「平均」と「実態」のズレ

飲食業界の労働時間は本当に長い?
データで見る「平均」と「実態」のズレ
厚労省データ
月88.6時間のカラクリ パートを含む平均値
正社員のリアル
週50時間超が6割 長時間労働の実態
なぜ「きつい」と感じるのか?

まずは、客観的なデータに基づいて現状を把握します。

公的な統計データと、現場の実感には大きな「ズレ」が存在します。

厚労省データ「月88.6時間」のカラクリ

厚生労働省が発表している「毎月勤労統計調査(令和6年分結果確報)」によると、飲食サービス業等の平均月間実労働時間は88.6時間となっています。

1日8時間勤務で換算すると、月に11日程度しか働いていない計算になります。

この数字の背景には、飲食業界特有の雇用構造があります。

飲食業界は全産業の中で最もパート・アルバイト比率が高い業界の一つです。

統計データは、短時間勤務のパートタイム労働者も含めた全従業員の平均値であるため、全体の数字が大きく押し下げられているのです。

参考|厚生労働省:毎月勤労統計調査(令和6年分結果確報)

正社員のリアルは「週50時間超」が6割

では、正社員に限定するとどうなるでしょうか。

日本政策金融公庫の調査によると、中小飲食店の正社員の労働時間は「週40時間超〜50時間以下」が約6割を占め、さらに「60時間超」の層も一定数存在することが明らかになっています。

多くの企業で「週40時間(1日8時間×5日)」が基準となっていることを考えると、飲食店の正社員は恒常的に残業が発生しやすい環境にあると言えます。

統計上の「平均」に惑わされず、この「正社員の実態」を前提にキャリアを考える必要があります。

参考|日本政策金融公庫:中小企業の従業員からみた働き方改革の現状と評価

なぜ「きつい」と感じるのか?

労働時間の長さだけでなく、飲食特有の働き方が「きつさ」を助長している側面もあります。

拘束時間の長さランチ営業とディナー営業の間に長い休憩(アイドルタイム)挟む「中抜けシフト」の場合、実労働時間は8時間でも、拘束時間が12時間を超えるケースがあります。

不規則な生活リズムシフト制で休みが固定されにくいうえに、土日祝日や深夜の勤務が多く、家族や友人と予定を合わせにくいことがストレス要因となります。

身体的負担立ち仕事が基本であり、ピークタイムの激しい動きや重い調理器具・食材の運搬など、肉体的な疲労が蓄積しやすい環境です。

2.知らないと損する!飲食店の勤務時間に関わる「法律」の基礎知識

知らないと損する!
飲食店の勤務時間に関わる「法律」の基礎知識
基本ルール
原則は「1日8時間・週40時間」。これを超えると残業代が必要です。
飲食店特例
従業員10人未満の店舗なら「週44時間」まで適法となる特例があります。
変形労働時間制
繁閑に合わせて労働時間を調整する制度。シフト制の要となる仕組みです。
上限規制・36協定
残業には「36協定」が必須。月45時間等の法的な上限規制があります。

「うちは飲食店だから残業は当たり前」という経営者の言葉を鵜呑みにしてはいけません。

労働基準法には明確なルールがあり、特例も存在します。

ここでは、自分の身を守るために最低限知っておくべき法律知識を解説します。

基本は「1日8時間・週40時間」だが…飲食店には「特例」がある

労働基準法では、原則として労働時間は「1日8時間、週40時間」までと定められています。

これを超えると割増賃金(残業代)の支払いが必要です。

しかし、飲食店には特例が認められています。

小規模店(10人未満)なら「週44時間」までは適法

商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業において、常時使用する労働者が10人未満の事業場(店舗)は、法定労働時間が週40時間ではなく週44時間となる特例が認められています。

これを「特例措置対象事業場」と呼びます。

注意すべきは、これが「店舗単位」で判断される点です。

企業全体で数百人の従業員がいても、配属された店舗のスタッフが9人以下であれば、その店舗では週44時間までの労働が「定時(残業代なし)」として扱われる可能性があります(企業の方針によります)。

シフト制の要「変形労働時間制」とは?

多くの飲食店では「変形労働時間制」が導入されています。

これは、繁忙期(週末や月末など)の労働時間を長くする代わりに、閑散期(平日など)の時間を短くし、一定期間(1ヶ月や1年)の平均で週40時間(または44時間)以内に収めればよいとする制度です。

1ヶ月単位の変形労働時間制

最も一般的です。月単位でシフトを調整し、残業代の発生を抑制します。

1年単位の変形労働時間制

季節変動が大きい店舗で採用されますが、週44時間の特例との併用はできません。

この制度自体は適法ですが、シフト作成時に正しく運用されていないと、知らぬ間にサービス残業が発生しているリスクがあります。

これを超えたらブラック?36協定と残業の上限規制

法定労働時間を超えて残業させるためには、労使間で「36(サブロク)協定」を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。

さらに、法改正により残業時間には罰則付きの上限規制が設けられています。

36協定と残業の上限規制

  • 原則:月45時間、年360時間以内
  • 特別条項(臨時的な事情がある場合):年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間以内

「人手不足だから」といって、この上限を超えて働かせることは法律違反です。

3.「長時間労働=当たり前」ではない!働き方改革の成功事例

「長時間労働=当たり前」ではない!
働き方改革の成功事例
制度改革
24時間営業の廃止と
定休日導入
ビジネスモデル
ランチ限定・売り切れ
御免の仕組み
テクノロジー
配膳ロボ・DXが
時間を創る

業界全体としては厳しい状況ですが、ビジネスモデルの変革やテクノロジーの活用により、適正な労働時間を実現している「勝てる飲食店」も確実に増えています。

24時間営業の廃止と定休日導入

大手ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」は、24時間営業を原則廃止し、定休日(元日休業など)を導入しました。

売上を追うことよりも、従業員の健康とブランド価値を守ることを優先した経営判断は、業界に大きな影響を与えました。

ランチ限定・売り切れ御免のビジネスモデル

京都のステーキ丼専門店「佰食屋(ひゃくしょくや)」は、1日100食限定、売り切れ次第営業終了というスタイルを確立しました。

これにより、勤務時間が固定化され、残業ゼロとフードロスの削減を同時に実現しています。

利益と働き方の最適化を目指す逆転の発想です。

テクノロジー(配膳ロボ・DX)が時間を創る

配膳ロボットやセルフオーダーシステム(モバイルオーダー)を導入する店舗が増えています。

これにより、ホールスタッフの移動距離や注文業務が削減され、接客や清掃など人間にしかできない業務に集中できるようになります。

DX(デジタルトランスフォーメーション)への投資は、業務効率化だけでなく、従業員の負担軽減に直結しています。

4.後悔しない転職のために!「ホワイトな飲食店」を見極めるチェックリスト

後悔しない転職のために!
「ホワイトな飲食店」を見極める
3つの重要チェックリスト
CHECK 1
求人票の
「ここ」を見る
CHECK 2
面接で確認すべき
「確信に迫る質問」
CHECK 3
店舗視察でわかる
「顔」と「オペレーション」

では、求職者はどのようにして働きやすい企業を見分ければよいのでしょうか。

求人票や面接で確認すべき具体的なポイントを紹介します。

求人票の「ここ」を見る

年間休日数「105日」が、一般的な企業(週40時間制)における労働基準法上の最低ラインに近い数字です。

※ただし、前述の「週44時間特例」を適用する店舗では、これより少なくなる場合もあるため注意が必要です。

「120日以上」あれば、完全週休2日制+祝日休みが確保されている可能性が高く、優良な環境と言えます。

固定残業代(みなし残業代)の記載「月給30万円(固定残業代45時間分を含む)」といった記載がある場合、基本給は低く設定されています。

45時間という時間は、36協定の原則上限ギリギリの設定であり、恒常的な残業が前提となっている可能性があります。

変形労働時間制の有無 制度の有無だけでなく、どのように運用されているか(シフトの組み方など)を確認することが重要です。

面接で確認すべき「確信に迫る質問」

面接の逆質問タイムを活用し、実態を探りましょう。

ただし、ストレートに「残業はありますか?」と聞くのは印象が良くない場合もあります。

以下のような聞き方が有効です。

面接で確認すべき「魔法の質問」

  • 「今の店舗で活躍されている社員の方は、平均して何時ごろに退社されていますか?」
  • 「繁忙期と閑散期で、シフトの組み方はどのように変わりますか?」
  • 「有給休暇は、皆さんどのようなタイミングで取得されていますか?(連休など取れますか?)」

店舗視察でわかる従業員の「顔」と「オペレーション」

最も確実な方法は、実際に客として店舗を訪れることです。

店舗訪問時のチェックポイント

  • スタッフに笑顔があり、活気があるか(疲弊していないか)
  • 店長とアルバイトのコミュニケーションは良好か
  • 清掃が行き届いているか(余裕のなさの表れ)

現場の空気感は、求人票の数字以上に雄弁に「職場の質」を語ります。

5.正しい知識を持ち、自分を守れる働き方を選ぼう

飲食業界の労働時間は、統計上の平均値よりも実態としては長い傾向にあります。

しかし、「飲食だから仕方がない」と諦める必要はありません。

法改正や人手不足を背景に、労働環境の改善に本気で取り組む企業は増えています。

重要なのは、法的な知識(週44時間特例や36協定など)を持ち、求人票や面接での回答を正しく読み解く力です。

自身のキャリアと生活を守るために、イメージだけでなく「仕組み」と「実態」で企業を選び抜いてください。

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